ABC

や/箭

石又は木を割るときに用いる楔形のものにて、鐵製のもの。これを割ろうとする木または石に差込玄翁にて打込む。

やいた/矢板

山留のために打込む板様の杭。(これは土木工事で用いる矢板のこと)

やいた/矢板

木石をコロまたは車により運搬するとき、地盤が軟らかいと車輪が潜ってしまうため、道板の代用または 車輪の下に使う板割をいう。

やいばからでたさび/刃から出た錆び

「身から出た錆び」に同じ。

やおびくに/八百比丘尼

人魚の肉を食べたために八百歳になっても若く美しいままでいたそうです。 江戸の八百八町、 仲人の嘘八百、 雁は八百矢は八本、 淡路の山は八百七谷、 百八煩悩、 八百屋、 八岐大蛇、 八雲立つ出雲八重垣妻ごみに八重垣作るその八重垣を、 八百万(やおよろず)の神、など 非常に大きなものを表現するときには「八」とか「八百」という数字が用いられるようです。⇒(七/なな)参照。

やかた/屋形

飾り手水鉢の水穴の上にのせ、装飾用とする。唐破風、片流造り、切妻破風、宮立形などがある。

やきこ/焼粉

耐水粘土を焼いて粉末にしたもの。耐火モルタルを製すとき砂の代わりに用いるもの。

やきなおし/焼直し

原型を多少変化することをいう。

やきばめ/焼きばめ

木製大車の車輪はケヤキ材で作られ、その上に鉄製の輪をはめこんで使う。 鉄製の輪は、炭火で熱し、鉄が膨張した時の寸法ではめこむ。 鉄製の輪は冷却すると縮小するので堅く車輪に固定する。この金輪のことヤキバメをいう。

やきばめ/焼きばめ

⇒ 【わじめ/輪締め】に写真入りで説明。
屋台に用いられる木製車輪はケヤキかカシ製で、その上に熱して熱膨張した鉄製の輪 (ワガネとか帯鉄(オビテツ)とかの名称)をはめこんだのち冷却して固定する。 木製の車輪に熱膨張させた鉄製の輪をはめこむ作業のことをヤキバメと呼んでいる。

やきつち/焼土

焼いた土。

やきや/焼家

焼け易い家。木造に同じ。

やぎり/屋ぎり

忍返に同じ。

やぎりこ/屋ぎり子

忍返を組成する細い木又は鐵などをいう。

やくいもん/薬医門

本柱控柱各二本づつと冠木、男梁、女梁、等より成り 屋根は一軒なる切妻破風造りの門。本柱は方形控柱又は円形なり。別に唐薬医門または四脚風薬医門と称するものあり。

やくがわら/役瓦

役物瓦。棟や軒先等の特殊な場所に用いられる鬼瓦や軒丸瓦等の特殊な形状の瓦をいう。

やぐら/櫓

遠く敵状を望みまたは接近したる敵を防ぐために設けたる高樓をいう。渡櫓、二重櫓、太鼓櫓、天守櫓、火見櫓などあり。

やぐらじょう/櫓錠

揚卸障子の出合い框へ取付けた締金物をいう。

やぐらけむだし/櫓煙出

屋根の棟上に作りたる図の如き形の煙出しをいう。茅葺屋根などにあり。

やぐらだい/櫓台

渡櫓下の石垣の部分をいう。「よせかけばしら」。

やぐらどうづき/櫓胴付

高く足場を組建て人足数多くその上に登りきやり謠いつつ大蛸を上下して地固めをなすことをいう。

やぐらぬき/櫓貫

二つ重ねて斜めに打込んだ貫をいう。即ち前後より一本づつ打って楔の如く重ねるなり。また重ねずしてあわすこともあり。

やぐらもの/櫓物

瓦に長屋物、広間物及び櫓物あり櫓物は専ら渡櫓等の類に用いたる瓦にして大型。

やぐらもん/櫓門

渡櫓下なる門をいう。之を「渡櫓門ともいう。」

やけすぎ/焼過

よく焼けたものをいう。焼過煉瓦の意味にも用いる。

やけん/薬研

V形の樋。

やけんぼり/薬研彫

V字形に彫ったもの。

やさま/矢狭間

城壁中の眼孔をいう。「銃眼」ともいう。

やしゃもん/夜叉門

日光に在る門。

やしろ/社

神を祀り置く建物。

やすみかけがね/休掛金

閂を差し込むために門に取り付ける金物。

やすめかけがね/休掛金

閂を差込むため門に取り付けた金物をいう。その形コ字の如し。

やすめかなもの/休金物

「障泥止」に同じ。

やすり/鑢

鋸の歯を利するに用いるもの。雁木鑢、両手鑢などの類あり。鑢にて鋸の歯を利くなすことを「目を立てる」という。

やすりがみ/鑢紙

紙に砂硝子粉などを付着させて製したものにしてペンキ塗り等の上を磨くために用いるもの。

やたい/屋台

祭りに使用される山車のうち、屋根のあるものを屋台というふうに個人的には認識しております。 しかし、二輪屋台のように屋根がなくても屋台と称されている例や、町の人が 山車(だし)、あるいは館車(やかた)と称している屋台の例もあったりします。
いわゆる屋台に共通しているのは、非日常の次元であるハレの日に登場して、祭りを盛り上げる装置であり、 住民の相互扶助の精神を回復し、地域に和合と活力をもたらしていることではないかと。

やたい/屋台が次の世代に伝えていくもの

地域に根ざした屋台は世代を超えた地域の交流によって支えられています。 交流があるから古い世代から新しい世代に屋台を引き継いでいけるのです。 積極的に使い続けていこうと思う人がいる限り、屋台の姿形がどんなに 変わろうとも存在し続けることができるわけです。
屋台を持つことによって否応なく生じてしまう強い地域への帰属意識ではなかろうかと思います。 (2018.07.12)

やたい/屋台

人の作ったもので「次世代に伝えたい」と思えることがあるのは、 そこに賞賛できる職人の技があるからです。 屋台は子や孫の世代が使うことを前提としています。だから、良い仕事によって作られなければいけないわけです。(2015.02.09)

やたいうま/屋台馬

屋台を保管しておく際は土台の四隅の下に架台を敷いて屋台を水平に保ち、4つの車輪を1寸程度浮かせておきます。さらに土台への負荷を軽減して土台の変形を防止するために土台中間部分にもジャッキで支えておくことが望ましいです。

写真は屋台の車輪径に合せて作ったウマです。材料には米松材を用いていますが、ケヤキ材で作らせていただくこともあります。白い塗装のようなものは、木口の割れ止めのために塗布した木工用ボンドです。乾燥すれば透明になります。

やたいかりぐみ/屋台仮組

屋台には木造住宅のように部品を付け足してゆくタイプのものと、決まった寸法の部品を組み合わせてゆくタイプのものがあります。
前者は、仮組の必要がないので、屋台製作費用を抑えることができます。一旦造ったらほぐすことができない反面、補強材を 入れられるため、屋台の剛性を高くすることができます。

後者は、ほぐせるように造るので部品の精度がシビアになります。きちんと寸法が合うように加工するための組立リハーサルが必要になります。 この組立作業のことを仮組みと称しています。
再び組み立できる屋台を解体する作業のことを「ほぐす」とも言います。

組子は、複数の斗や肘木が互いに組み合わさり、柱に挿してある 部材です。修理や、白木の屋台に漆塗りを施すときは、組子の込栓を抜いて一つ一つの部材にバラバラにし、接合部の漆塗り厚分を削って、 漆を塗ったあとも組み立てができるように合わせます。

なお、作業場で仮組みした屋台は、解体してから町の屋台格納庫に運び入れ、最初から組み立て直します。

やたいまつり/屋台祭り

恣意的に選んだ屋台祭り、屋台や山車の引き回しがある祭りの年間スケジュール。
だいたい毎年このような日程で開催されているという参考資料です。正確な情報は主催者へ…。
(単独ページに移動しました)

やたいをつくるしょくにんとしごと/屋台を造る職人と仕事

屋台造りを得意分野とする職人たちの協同作業で成り立っています。

やっこさんがわら/奴桟瓦

最小の桟瓦すなわち並桟瓦。

やつむねつくり/八棟造

神社造りの方の一法にして本殿拝殿及びその間にある間は連続した屋根の下にあるもの。

やといくい/雇杭

杭打ちのとき杭頭漸漸下方に至り終わりに鐵槌の及ばないとき仮に四五尺の長さの杭をその上に載せて打ち込む。

やといざね/雇實

實矧の類なり唯その實は造り出しにあらず全くの別物なりとする。雇實矧の略称なり。雇貫にて床板などの張ることを入實張という。

やといほぞ/雇い

繰り出しほぞと同様に別の木でほぞを造ること。

やはず/矢筈

総て左右より中央に集まり恰いも矢筈のごとき形をなすものにいう。図は煉瓦又は木などを矢筈に並べた形を示す。

やま/山

大工の符牒。八のこと。
土の意味にも用いる。凸凹のあるものの高い部分をもいう。「生子板の山とはその高い部をいう。」

やまか

伊豆の下田より産出する凝灰砂岩石なり。

やまがくる/山が来る

根切り脇の土の崩れること。

やまきず/山疵

石山における石の疵をいう。

やまぎりのこぎり/山切鋸

立樹を挽切るため杣の用いる長い鋸なり。

やまくじら/山鯨

猪肉の異名。

やまとうち/大和打ち

板の裏表から板を打つこと。

やまし/山師

有謀壮策ある者のこと。 河村瑞軒が甲府の山の木を切ったことから山師という言葉ができた(らしい)。 東都に大火が起きるのを見た河村瑞軒は、直ちに自らの家財を金二十両に代え、 甲府に走って材木を買い付け、その材木を延焼した都下の諸人に売却し、 巨万の富を築いたという。

やましのげんかん/山師の玄関

分に過ぎたる生計をなし、いたずらら門戸を壮大にすることで、俗眼を惑わすこと。

やまじろ/山城

軍事的用途を第一義として、山頂または山腹に構えられた城。独立した由が好まれ、空掘り掘り、逆茂木を設け、塀をめぐらせた。中世に多く近世ではまれになった。奈良の高取城、大分の岡城、岡山の備中松由城など。→ひらやまじろ/平山城

やまじゃり/山砂利

陸地より掘出した土雑じりの砂利。

やまたけ/屋間竹

「やなかだけ」に同じ。

やまちゃ/山茶

日本原産の茶。古代の日本人は一部を除いてそれが飲用になることを知らなかったので、 薬用として中国から輸入した茶種を、高僧の手により坂本、宇治その他で茶園とした。

やまと/大和

庭などに用いることある簡略なるとにして大和打ちの戸の略称なり竪框の間に胴縁を打って板を裏表より交互に打付けて造りたる戸にして上下框なし。

やまとうち/大和打

板を交互に裏表にうちつけること。その表板は裏板の間の心墨に一致する。

やまとえ/大和絵

中国風の絵画「唐絵」に対して、それを日本風に変え、日本の名所や月次行事などを描いたもの。(平安時代)

やまとかき/大和掻

蛇が樹を纏うように蔓などを竹等に纏うことをいう。

やまとたける/日本武尊

左は小池佐太郎の毛筆画習作。 手本にしたと思われる絵は
国立国会図書館デジタルコレクション『萬物雛形画譜』 の 2 に収載されています。


やまとづくり/大和造り

page387 引用 〜 「大和造入妻」は何のことかわからない。「大和造」という造り方の存在するや否やを調べてみたが、 好結果を得なかった。「入妻」というのも同様判明しなかった。或いは妻が内方に入っているから入妻と したのかもしれない。 〜 引用終わり
(天沼俊一著 成虫樓随筆 国立国会図書館デジタルコレクション)

やまとぶき/大和葺

板葺の一種にしてずのようにしたもの。

やまとべい/大和塀

地長押より笠木迄の間は下がり杉皮張にして押縁を晒竹一尺五寸ま程に打付けて造りたる塀なり。数奇屋の庭などに用いることあり。

やまとまど/大和窓

突上げ障子を有する天窓をいう。

やまどめ/山留

土の崩壊を防ぐために設けたものをいう。

やまどめさく/山留柵

根切り脇若しくは土手等の土の崩壊を防ぐためにもうけたる柵をいう。

やまばかける

古語なり。鑿焼することをいう。

やまびきいた/山挽板

山方にて挽割りたる板。

やまびきざい/山挽材

山方にて挽割って作りたる木をいう。

やまびきもの/山挽物

山挽材に同じ。

やまとふくろくじゅのず/大和福禄寿之図

左は小池佐太郎の毛筆画習作。 手本にしたと思われる絵は
国立国会図書館デジタルコレクション『萬物雛形画譜』 の 2 に収載されています。



やまぶきいろ/山吹色

黄金のこと。

やままるびょう/山丸鋲

頭の山高なる鋲。平鋲に対する名称。

やまみちかとう/山道火燈


やまみてんぐ/山見天狗

山水の字を草書にて、天狗の面を書くをいう。

やまわれ/山割

石山にてできたる石の裂け目をいう。

やりかた/遣り方

杭、貫、水糸等をもって、工事する位置や高さなどを現場で表示する規準となるもの。 丁張(ちょうばり・ちょうはり)ともいう。

やりかたぐい/遣方杭

水平を見る貫、やりかたぬき/遣方貫を打ち付ける杭のこと。

やりはきゅうしゃくにながえはにけん/槍は九尺に長柄は二間

長さの定めをいう。長柄=長柄槍のこと。

やりもちのせっちん/槍持ちの雪隠

細長い家のこと。

やね/屋根

屋根の根っ子説。古くは屋も根も高いという意味だった説。根は峰、棟、嶺を指す説。など。棟から両側へ流れを造る切妻造、その四方に庇をつけた入母屋造、棟から四方へ流れる寄棟造、棟を持たない宝形造の四つの形が基本。切妻造は真屋(まや)と呼ばれ神社建築に用いられるなどして使いわけられた。葺材によって、茅葺、板葺、柿葺、桧皮葺、瓦葺などかある。

やね/屋根

屋根板を葺く場合と葺かない屋台があります。屋根板を葺くと(野地板に銅板を釘打ちするため)解体が困難になります。
(この写真の箱棟(棟樋)と屋根にはクロイタという銅板が平葺き (一文字葺きのこと) してあります。環状の金物は屋根に乗った人が命綱を留めるために取り付けられる丸環です)
(クロイタには暗赤色と黒褐色のものがあります。前者は昔からあるクロイタで、5(10?)トン以上の注文があればメーカーで生産してくれるとのこと。前者よりも製造方法が容易な後者は、化学反応により硫化銅の状態を作り出した状態らしいです。昔の屋台の屋根板には加工性が良いという理由から 0.25ミリの銅板が使われていたことが多いようですが、現在は厚さ0.3ミリの銅板を用いることが多いです)

りん脱酸銅板(普通の銅板のことで赤銅色)
録青銅板(硫化銅板のことで、表面に録錆処理がしてある)
黒板(亜酸化銅板のことで、表面を飴色に処理してある)
定尺(365ミリ×1212ミリの大きさの銅板のことで、一文字葺きでは4〜6枚に切って使用。建築工事ではコイルした銅板を使いますが屋台では定尺材を使用。)

屋根板を取り外したところ


一層の屋台は、それぞれの部材が容易にばらせる構造になっています。 およそ一日で解体、組立することができます。

やねいた/屋根板

一層大唐破風屋台の屋根板です。屋根板にはスギ板を使用しています。ヒノキの板だと屋根のてりむくり曲線に追従できずに割れてしまうからです。屋根板は分割して組み立てられているため、容易に解体することができます。屋台の内部には梯子が取付られ、開口部の蓋を開けて屋根上に上ることができます。

やねうら/屋根裏

天井なくして裏板の現れるようにつくりたるもの。

やねくぎ/屋根釘

「こばねくぎ」に同じ。

やながせなは/柳ヶ瀬縄

紀州より産出する株梠縄をいう。

やなかだけ/家中竹

茅葺屋根の垂木竹を受けるため合掌の上に一尺二寸程に渡したる竹をいう。

やねこうばい/屋根勾配

たとえば3寸勾配ならば、水平方向1尺に対して鉛直方向に3寸によってできる 斜辺の勾配のこと。屋根勾配を度数に変換するには関数電卓のアークタンジェント を使います。3勾配ならば、atan(0.3) → 16.69度 になります。 逆に角度を屋根勾配に変換したいときは、 タンジェントを使って、 tan(16.69) → 0.2998 です。 ← の式をそのまま Google の電卓(機能)に入力しても正しい答えは出ませんので、度をラジアンに変換するための式を加えて → tan((16.69 * pi) / 180) としてください。しかし Google の電卓で arctangent を計算させる方法はわかりませんでした。

やねしっくい/屋根漆喰

瓦の接合又は棟等の用いる漆喰。

やらい/矢来

遣の義なる故矢来は勿論当字なれど今わ普通の文字となれり。矢来は仮囲にして竹または丸太などにて作るものにて角矢来、丸太矢来、竹矢来など数種あり。菱竹矢来にあっては筋違いなる竹をいう。

やりかえし/遣返し

一つの木を他の木に穿きたる穴に差込、更に反対の方向に少しくいざらすことをいう。二本の柱の間へ横木を差込むときなどに遣り方をなす。例えば床の間の落掛の如し。

やりかた/遣形

壁の中心、内外面、等の位置を標示すすために設けた仮説物。杭を建て貫を打付け杭頭を矢筈またはイスカに切るを普通とする。

やりかたくい/遣形杭

遣形の杭をいう。これを「見当杭」または「水貫」とも称す。

やりかたぬき/遣形貫

遣形の水平なる貫をいう。これを「水貫」とも称す。遣形の中此貫を最も必要なるものとする。

やりかんな/槍鉋

槍先のような身を有する利器にして突て削るもの。鉋のように鉋台はなく全く槍の如し。

やりちがい/遣違

ある点よりは先方へ出すことをいう。

やりど/遣戸

引戸に同じ。

やれいけた/破井桁

障子又は欄間の組子などの配置の一方。又は模様としても用いることあり。その形は井桁の組合わせにして所々断絶したもの。

やわり/矢割

石を割る一法。鐵楔様の道具を石に穿てる穴に差込玄翁にて打撃して割る法なり。


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