わ/輪
細長きものを円く曲げたものの総称。わ/輪
鬼瓦の「輪」はその周りの縁をいう。わ/和
日本の異稱。外国に対して我が国を区別するために種々の事物に添えていう語。わかいしゅ/若衆
祭礼などの時、一村内又は一町内の総代となりて世話をする者。商家などにて小僧より年長の手代。 すべて労働し又は使役せらるる壮年の男子の稱。わかいしゅがしら/若衆頭
祭礼などの時、一村内又は一町内の若衆の頭となりて世話をする者。わかしゅ/若衆
昔男子の未だ元服せざる者。わかもの、わこうど。かげまやろう。わかぎ/輪鍵
輪掛金。わかけがね/輪掛金
かけがね。わかしつぎ/鍜接
わがとも/吾友
竹の異名。白楽天、〜 北窓に竹を植えて友とすといえり 〜わかは/若葉
植物の装飾文様のひとつ。寺院建築の木鼻や虹梁の端部などに彫刻される。鬼瓦の足元の装飾にも用いられる(若葉鬼瓦)。屋台でも虹梁(など)の見付部分に施された唐草などの彫刻をいう。画像床の間の違い棚の筆返しの一形式の呼称。
わがね/綰
曲げて輪をなすこと。わがね/輪がね
屋台の車輪の外径に合わせて円筒状に作られた鉄製の帯輪のことです。輪がねが緩くなったり歪になったりするとクシガタやゴコウやタマの取り合い部分に隙間や欠損が生じ、車軸や軸受けに無理な力がかかるようになって、屋台の引きまわしに影響を及ぼすようになります。 上の写真は焼ばめする前の新しい輪がね。厚さはおよそ12ミリ。下は経年使用により薄くなった輪がね。わかみず/若水
もとは立春の日に汲む水をいいしが、後には正月元旦に汲む水をいえり、之を飲めば年中の邪気を払うという。わきあがり/脇上り
式台の脇にある間をいう。わきかんな/脇鉋
敷居等の溝やその他小穴の脇を削るときに必要な鉋。わきげぎょ/脇懸魚
棟の近くの中央の懸魚に対して比較的軒の近くにあるものを脇懸魚という。わきしょうじ/脇障子
社殿や書院などの縁の行き止まり、または仕切りのために立てらけるもの。笠木で側柱とつなぎ、その上を竹の節欄間をつけ、板壁または片開きの戸を立てる。→たけのふしらんまわきしょうじばしら/脇障子柱
わきど/脇戸
中央扉の両脇もしくは片脇にある小扉。わきつら/脇面
桁等の左右の面をいう。わきばしら/脇柱
能舞台の前面において脇座に近い柱をいう。わきはめ/脇羽目
神社等において柱と扉との間にある羽目をいう。わくざしとりい/枠指鳥居
四脚鳥居に同じ。わぐ/綰
[他動カ下二] わがね。わくづり/枠釣
釣束を釣る方法。四本の竪木と上下の貫で枠を組み、それを梁などに掛けて束を釣る。わくひかえ/枠控
柱と貫より成る控えをいう。枠控は門その他の建物の傾斜を防ぐために設けるもの。わくひじき/枠肘木
【組物】柱頭に大斗をのせ、斗の上で十文字状に組み合わせて据える肘木のこと。→坪肘木。わざくれはみのはめつ/わざくれは身の破滅
自暴自棄は身を亡ぼす。わさつの/鹿杖
杖の頭に鹿の角を付けたるもの。わざもの/業物
刀剣など名工の鍛えつくれる鋭きもの。快刀。利刀。わし/私
わたくしの略。わじめ/輪締/焼きばめ
鉄の輪が熱膨張すると直径が大きくなる性質を利用して、 輪ガネを木製の車輪に嵌め込む作業です。コークスを敷き詰めた上に焼嵌め用の釜を置き、その中に輪ガネと薪を入れ、ふいごでもって空気を送り高温状態を作るという場合もあるそうです。このときは薪で代用しています。
焼バメ用の釜に何度も薪を放り込み、火の勢いが弱くならないように注意しながら、ひたすら焼き続けます。
待つことおよそ40分。輪ガネが熱せられてうっすら赤色になっています。これをハサミで掴んで素早く車輪に被せます。
焼けた輪ガネを木製の車輪の上に被せ、ハンマーで叩きながら均等に嵌め込みます。
木には軟らかい部分と硬い部分が有ります。軟らかい部分は燃え易いため、輪ガネが嵌ったときに正確な円にはならず、歪になることは避けられないそうです。
車ガネが車輪に嵌ったら、直ちに水をかけてして冷まします。これによって輪ガネが収縮し、車輪に密着するということです。
最後に輪ガネの赤丸印の位置に穴を開け、ビスにて (念のために)木部まで貫通固定し、ビス頭を溶接処理して終りです。
輪ガネが緩んでいると、ハンマーで輪ガネを叩いたときにボソボソ? (鍛冶屋さんの話)というような音がするそうです。叩いたときにホコリが出ることもあります。
わしにうさぎ/鷲に兎
鷲に兎、鷹に雉、猫に鼠の出会いし如く。わすれがたみ/忘形見
孤を片親又は他人よりいう。わすれみず/忘水
山陰木陰などの人のありとも知られぬ水をいう。わたいた/綿板
物の間に差し入れた板をいう。わたし/私
わたくしの略。わだち/轍
鬼板の縁をいう。わたどの/綿殿
わたりどのともいう。渡り廊下に同じ。わたばな/綿花
ゆいわたに同じ。わたりあご/渡腮
わたりあごありかけ/渡腮蟻掛
普通の渡腮に類しているが違う所は下木の上端の内方に切缺を鳩尾形をして、上木の下端にもそれに相當する形のものがなっている。渡腮にしてかつ蟻掛になるものわたりいた/渡板
根切りの上など渡した板。わたりかき/渡缺
渡腮にするための木の一部を缺くこと。わたりかなもの/渡金物
雨開の扉の召合わせの部分に設けてある緊り金物。わたりがわ/わたり川
三途川をいう。〜 泣く涙 雨とふらなん渡り川 水まさりなば 還り来るかに。〜 [古今集]わたりやぐら/渡櫓
城の枡形にあるものにて左右に「櫓台」と称する石垣を設けその上に跨れる建物。その周りの壁はいずれも塗り壁にして狭間及び武者窓を設けてある。わたりやぐらもん/渡櫓門
櫓台の間に門を設ける。わたりろうか/渡廊下
雨建物の間にあって連結するための廊下。わだるき/輪垂木
曲線系の垂木。唐破風の垂木もその一種なり。わちがい/輪違い
円を組み合わせる模様をいう。輪違瓦を略して輪違いともいう。わちがいかわら/輪違瓦
大棟の腹などに特別の丸瓦を仰伏交互に重ね合わせ輪違いと称する模様の様に組合わされた瓦。わなぐ/輪薙
眞を割り振ること。わだるき/輪垂木
曲線状の天井に用いる輪郭が肋骨状の垂木。茨鰭という突起が途中にあるものを茨垂木という。わなぎこむ/輪薙込
一の木を他の木に食い込ますこと。わなぎほぞ/輪薙ほぞ
川字形のほぞを言う。わなぎぼり/輪薙彫
一の木を他の木に輪薙込むために後者を彫ること。わなぐ/輪薙ぐ
わなぎこむに同じ。わにあし/鰐足
歩行に足の尖を外に向けるを外鰐、内に向けるを内鰐という。 / 人が歩行するときに両足の頭を内側に向ける癖のあるもの。わにぐち/鰐口
鈴を偏平にしたような円形の銅製の楽器で仏堂・社殿の前に吊り下げ、参拝者が前に 垂らした綱で打って鳴らす。古くは金鼓(こんく)。わらう/笑う
二つの部材を止めてある個所が反ったりして隙間があいてしまうこと。わらうてそんしたものなし/笑うて損した者なし
「笑うて損するは箔屋ばかり」(笑のために箔の飛び散ればなり)わにしゅ/假漆
略して「ニス」ともいう。わらい/笑い
石積みにおいて面に近いところの目地の部分を少し口をあけておき、モルタルをつめることがある。その口空きを「笑い」という。わらざ/稿座
扉の軸を受けるため地覆などに取付ける金物。わらざとりい/稿座鳥居
根包みを有する鳥居をいう。わらつた/稿つた
わらすさともいう。古縄を切り解いて製したつた。壁の荒塗り又は屋根の土居塗りなどにおいて荒木田土に混ぜて用いる。わらびかどう/蕨火燈
上方に渦巻きがある火燈。わらびて/蕨手
山車の跳高欄などで、高欄の架木の端が蕨のような曲線を描いて終る部分のこと。厨子の軒隅に突き出た蕨の先のような曲った飾りのこともいう。 神輿の蕨手にあっては槻にて尻の方を目違いに作る。わらびなわ/蕨縄
蕨の根の筋で作る縄。 弾力があるゆえ茅葺屋根の針目押さえなどに適当。わらぶき/藁葺き
【屋根】→かやぶき/茅葺きわらぶきやね/稿葺屋根
稿にて葺きたる屋根。わらべのこがたな、さるのいきおい/童の小刀、猿の勢
共に恐るべきもの。わりあしがため/割脚固
柱の両方より取付けた脚固。わりくさび/割楔
わりぐり/割栗
わりぐりいし。わりぐりいし/割栗石
石の割れすなわち石こつぱの大きいもので基礎に用いるもの。わりけひき/割罫引
建具職又は指物職工が杉檜等の軟材の薄板に用いる罫引。わりじょうぎ/割定規
二つの定規を二個の丸いダボで腹合わせにして一つの定規とするもの。わりづか/割束
「人字形」とも呼ばれる下方が八の字形に開いた束のこと。法隆寺金堂上層の高欄の腰組など。わりどだい/割土台
柱の両方より取付けた土台。柱の片方のみに取付けたものは付土台と称す。わりはだ/割肌
継手などを解かり易く見せるために両方の木を取り外して斜めに見せた図。わりぶた/割蓋
下水溜め枡等の蓋にて二枚以上で成るもの。われなべにかけぶた/破鍋に缺蓋
〜 つらかりしそなたの尻も破鍋に我かけぶたに合ふぞうれしき。〜[堀川狂歌集]われなべにとじぶた/破鍋に綴蓋
似たもの夫婦の意味。われなべもさんねんおけばようにたつ/破鍋も三年置けば用に立つ
天下に棄物なきをいう。われものとこむすめ/破物と小娘
用心すべしとの意。わよう/和様
仏教建築の伝来以降に日本化され、古代を通じて完成された建築の様式。 (飛鳥・奈良時代に中国や朝鮮から学んだ技術に(はいった寺院建築の様式を)日本的な工夫を加えて作り出した寺の様式のこと)東大寺法華堂、唐招堤寺金堂、平等院鳳凰堂など。 → 鎌倉時代には中国の宋より、寺院建築を変貌させる「大仏様」と「禅宗様」が入り、 それらと共に現在まで流れは続く。わよう・からよう/和様・唐様
page93 引用 〜 日本の寺社建築に於いて、「和様」と「唐様」との区別は、初歩の時代には 頗る判りにくいらしいが、少し馴れてくるとじきに判別がつく様になる。勿論一つや二つの 特徴ではないが、多くの差別のうちに、肘木の形等は最も判りやすいものの一である。 そこで肘木の例をとって見る事にする。最も簡単な組み物だと「舟肘木」だが、あいにく 「舟肘木」や「大斗肘木」に唐様がないから、その次に簡単な「三斗」の場合を考えて みるが、三一下図に於いて、左は「和様肘木」で右は「唐様肘木」である。 図と記入の文字を見れば判る筈だが、念のため一通り書いておく。和様では肘木の下端が円弧に非ざる二次曲線より成り、木口との取り合わせが明らかで あるから、木口のほうから見ると斗尻の下に長方形の部分が見えるが、唐様は反対に 肘木の下端から木口に移るところは円に近い弧からできているから、下端から自然に 木口に移行していて、その区別がつきかねる。これは洵に著しい事実で、これさえ心得れば、 肘木の和様と唐様は、間違えることはできないのである。 尤も時には肘木その物は唐様に近く、殆ど下端と木口の区別がつかない位にしてあり、 それに一連続曲線から成る面を取ったりしたものもある。こうなってくると、和様と 見ても唐様と見ても差支えのない事になるので、不明瞭に曖昧な場合は何にでもあるのである。 〜 引用おわり
(天沼俊一著 成虫樓随筆 国立国会図書館デジタルコレクション)
頗る(すこぶる) =はなはだとか、ことのほか
洵に(まことに)
尤も(もっとも)