ひあい/火相・火合
茶室で炉に炭をつぎ火加減を定めること。火相によって湯相(ゆあい)が定まる。ひうちいた/火打板
襖の隅々を固めるために設ける三角形の板。ひうちぬき/火打貫
隅に斜めに取り付ける貫をいう。ひうちばり/火打梁
隅に斜めに取り付ける梁をいう。ひえん/飛檐
高い軒のこと。二軒などのときは上段の垂木を飛檐垂木などと呼び、下段を地垂木という。 飛檐垂木の軒隅の取りつくのは、飛檐隅木(ひえんすみぎ)ひえんだるき/飛檐垂木
この垂木は二軒において最外方なる垂木にして茅負を受けるものなり。それにより内方の垂木を地垂木という。また一軒にても反りあらば飛檐垂木なり。ひおおい/日覆
日光を遮断するものをいう。日覆いは布、木、竹、等にてこれを作る。簾もその一種なり。ひかえ/控え
塀などの傾斜を防ぐ斜めの木(控え柱)をいう。石積みにおいて他石よりは余分に壁中に入り込めたる石をもいう。即ち控取の略称。
ひかえつな/控綱
虎綱をもいう。ひかえどり/控取
石積みにおいて他石よりは余分に奥へ入り込める石。控柱の意にも用いる。
ひかえぬき/控貫
控柱と本柱とを繋ぐ柱なり。ひかえばしら/控柱
壁、塀、等の傾斜を予防するための支柱。ひがき/檜垣
檜の薄板を網代組として作りたる垣。ひがって/非勝手
本勝手の反対。室では点前座に向かって客座が左側にあるもの。逆勝手。左勝手。ひかる
指金(差し金・さしがね)などで、直角でない材料の曲がり具合や角度を接合しようとする材などに写し取ること。ひかえいし/控え石
路地に打たれた(据えられた)主石の飛石の渡り(飛石と飛石の間隔)を補完するように 打たれた小さめな飛石のこと。(脇役的な飛石)ひかえぬき/控え貫
控柱と本柱を通す貫のこと。ひぎ/氷木
千木に同じ。違木より出たる語なりという説あり。ひきがく/挽角
鋸挽したる方材にして横断面は正しき矩形をなすものなり。野額に対する語なり。ひきかなもの/引金物
構造物中の石又は木などをその位置に保留せしむるために取付けたる金物をいう。例えば蛇腹石の墜落を防ぐためなる鎹状の金物などその一例なり。ひききりのこぎり/挽切鋸
細歯を有する鋸にして器具用なり。ひきしょうじ/引障子
敷居鴨居に依りて開閉する障子。ひきだし/引き出し
草履入れ引き出し(抽き斗し)の枠
ひきたてざい/挽立材
鋸挽したる木材をいう。ひきたてなおし/引立直
移築または移転をいう。ひきちがい/挽違
木口の矩形なる木を斜めに左右同形に挽割る場合にいう。また挽割りたる木をもいう。挽違いに挽割ることを「長押挽」と称す。ひきちがい/引違
二枚以上の障子又は戸を二筋溝により横に開閉し得る様になし閉鎖したる場合には框の重なり合う様になしたる場合にいう。ひきちがいまど/引違窓
引違いになしたる障子を有する窓をいう。ひきつな/引き綱
写真はクレモナロープ 直径24ミリ。ほかに見た目では区別できませんが、スパン パイレンという繊維ロープもあります。屋台引き綱の用途とする場合は、雨ざらしで保管されることがない、軽い、安価という理由からスパン パイレンロープを選択される場合が多いようです。クレモナ | スパン パイレン | |
強度 | 〇 | 〇 |
耐水性 | 〇 | △ |
重量 | 重 | 軽 |
価格 | 15%増 | 1 |
ひきて/引手
襖、障子、等を開閉するときう指を入れるために設けたる凹みを有するもの。ひきていた/引手板
襖又は障子の引手の所にある板。ひきてかなぐ/引手金具
襖や戸の開閉の機能と装飾を兼ねる金具。紅色の房を下げたものを総(ふさ)引手という。ひきてかなもの/引手金物
金物の引手。ひきど/引戸
溝に沿いて横に開閉しえる戸をいう。やりどともいう。ひきとおし/引通
水系を張りたる場合にいう。「引通を検査する」とは直線なるや否を検査することなり。ひきどっこ/引独鈷
「弐番」と記された部材(引独鈷)の両端は、引独鈷蟻という仕口になっていまして、引独鈷を写真の上下方向にスライドさせることで、写真の左右に接する部材を接合したり分離したりすることができます。ひきどっこあり/引独鈷蟻
大なる破風板を指桁に取付けるときなどに用いる仕方なり。図の如く雇竿の一端に蟻を作りて破風に差込み指桁上端には竿を入れるための穴を彫て竿を差入れ車知にして固めるなり。ひきばり/引梁
「しきばり」の誤称。ひきまど/引窓
屋根勾配に沿いて設けたる天窓にしてその戸及び障子を開閉するには引網を用いる。ひきまわし/引廻
竹を切るための小鋸にして長さ七八寸幅五六分のもの。ひきもの/挽物
轆轤挽したる物を総称する。手摺子、など総て断面円いものは挽物にする。ひきわけど/引分戸
二枚の戸より成る引戸にして一筋溝により各右又は左に開きえる様になしありて閉鎖したる場合には竪框は突付けになるものなり。ひきわたしこうばい/引渡勾配
返りまたは起り屋根における軒先と棟を結ぶ直線の勾配のこと。ひきわたしずみ/引渡墨
前を見よ。ひぐち/樋口
下水または上水において水の出口をいう。ひくてあまた/引手あまた
恋慕する人多きをいう。ひご/籤
細く割りたる竹をいう。それよりして細鐵をも籤と称す。されど竹との区別するため鐵ひごと唱る。ひごたけ/籤竹
「ひご」に同じ。ひざくがた/火珠
方形屋根又は塔上に用いる火炎付きの宝珠をいう。ネ杓形とも書く。ひさし/廂
寝殿造りにおいて身舎の外にして簀子縁の内なる細長きところをいう。入側という。身舎と廂の間には壁なくして取り外し得る格子あり。窓又は出入 口などの上において突出しえる小屋ねをもいう。
ひさしのあいだのもものき/庇の間の桃の木
細長き喩。ひし/菱
菱模様の中には入花菱、空花菱、花菱、立菱、雲菱などあり。ひしいげた/菱井桁
菱形なる井桁の模様。ひしがき/菱垣
竹を細かに菱形に組みて作りたる垣。「たまぶち」を見よ。ひじかけ/肘掛け
ひじかけまど/肘掛け窓
窓の高さが一尺二寸以下をいう。ひしがた/菱形
菱模様に同じ。ひじがね/肘金
折釘の如き形をなしたる鐵物なり。之を戸枠に打ち込み扉には肘壷を取付け両者一組となりて扉の開閉用具となるなり。ひしくみらんま/菱組欄間
組子を菱形になしたる欄間。ひじき/肘木/肱木/舟肘木
【組物】大斗の上に架けて方斗を支えるもの。舟木ともいう。端部を丸く剃るその形が人間の肘に似ていることから肘木。和様、禅宗様、大仏様によって形状が異なる。→舟肘木屋台組子の舟肘木です。広義において肘木とは、上部の荷重を受ける横木のことを指します。建築様式によって形式に違いがあります。
右の白黒写真は、よその大工さんが数十年前に作られた屋台の一部で、肘木の赤丸で囲まれた部分は笹繰り(ささぐり) といって、斗がのらない部分の上角を、笹の葉に似せて取去る加工をしています。これは奈良時代の建築や禅宗様建築に見られるそうです。
ひじき/肘木
一本の太い枝が垂直の幹から人間の肘のように横に出るもの。この形の木は忌木であるので山にこれが あったとき、杣(そま=きこりのこと)や炭焼きは伐るのを控えて山に残す。ひしこ/菱子
横断面が菱形をなせる連子こをいう。ひしたけやらい/菱竹矢来
「ひしやらい」を見よ。ひしとんぼ/菱蜻蛉
菱形の交わる点に十字を付したる模様。ひじつぼ/肘壺
「ひじがね」を見よ。ひじつり/肘釣
扉を肘金及び肘壺にて開閉せしめる様になしたるとき之を肘鈎という。釣は吊なり。ひじばしら/肘柱
實柱に同じ。ひじはまつげ/秘事は睫毛
秘伝は甚だ瑣末な所にあるということ。ひじもちかまち/肘持框
扉において肘壺の取付けたる竪框をいう。即ち釣元框の一つなり。ひじもちざん/肘持桟
扉の桟中肘壺の取付きある桟をいう。ひしやらい/菱矢来
三四寸周りの唐竹を菱形に組んで作りたる矢来。その造り方は末口三寸程の杭を一間まに掘建てとなし貫を三通りに打ちつけ扣取を二間まに建て、唐竹を菱形に取り付けるなり。びしゃもんきっこう/毘沙門亀甲
模様の一つにして図の如き「釼先」に類するもの。ぴしゃんどん
石面仕上げ道具の一つにして方錐形の突起を多く有しそれにて石面を敲き痘痕仕上げとなすもの。またその仕上げ石面をもいう。びしゅうひのき/尾洲桧
一部の大工などの間では、桧のうち木曽桧のことを尾洲桧と呼ぶことがあります。 江戸時代に国という意味の「州」を旧国名の頭の文字の下に付けて呼ぶ慣わしがあり、 尾張国が尾洲と呼ばれていたことがあります。尾州は現在よりも北を流れていてた木曽川の 南側、木曽川地方にあたり、北側にあたる現在の長野県木曽地方のほとんどは美濃国(濃州)に属していました。 木曽桧は樹齢250年でも直径は50pほどにしか育ちません。しかし年輪が緻密で (幹の成長に伴なって年輪成長幅は狭くなる傾向があり、 樹皮に近い個所では2cmで45程度の年輪が読み取れるのが特徴) 強く、粘りがあって軽く、 狂いも少ないため屋台の材料にも使用しています。⇒ 日本三大美林- 写真の「木曽桧」用材について
- 芯去り
用材に樹芯を持っていると芯割れが発生するため、樹芯を中心とした10cm角程度を避けて使用するという意味(だと思う)。 一般に寺社仏閣や屋台山車には芯持ち材を使用しない慣わしである。 しかし、実際面として太い木曽桧の入手は甚だ困難であるため、この用材のように樹芯をすれすれで避けて製材 することがある。芯割り製材の芯去り材の場合は、存在しない樹芯を中心に小さな割れが生じることもある。 なお、芯去り材よりも芯持ち材のほうが(たとえ樹芯割れが生じても)強度があるので、 隠蔽材であるところの車持ち土台には芯持ち材を使用することがある。
- 辺材なし
芯材は赤味ともいい、樹脂分があるので腐れや虫害に強く耐久性がある。写真のサイズ(19cm(柾)×27cm)に製材するには、少なくとも末口 60cmの原木が必要であるが、この程度の太さの原木になってくると白太(辺材)が著しく腐りやすい。だから、余計に辺材の 使用を避けなければならない。但し、細い丸太の白太部分にあっては一般に十分な強度と耐久性を持っているので、 辺材があっても全く差し支えなく、木造住宅用途の細い部材には、普通に辺材が含まれている。
- 無節
美観的理由で節のない用材が好まれるほか、節があると長持ちしないと聞いたが、その理由は忘れてしまった。 (節があると屋台を粗末に扱うので…そんな理由だったかもしれない)
- 柾目
見付を柾目とする部材が多い。曲がって流れているような柾目や、まっすぐな柾目がある。
ひずみ/歪
「のぞき」を見よ。ひせき/碑石
文学碑や墓碑や記念碑等の場合、中心となって表彰分の書かれている石。ひきものし/曳物師
巨大な石や樹木を運搬したり移動したりすることを専門とする業者。曳屋。ぴたごらすのていり/ピタゴラスの定理
ひたえだち/額立
唐破風の柄振台下端より登軒付上端までの間をいう。ひつじ/羊
(彫刻)「屠所の羊」に基づく「羊の歩み」は無常を表す意味があるという。図像的には 山羊との混同があり、山羊には長いあごびげのあるものが多い。ひづか/樋束
樋貫を差込たる棟束をいう。ひっかけかわら/引掛瓦
瓦尻に突起を有する瓦なり。其の突起を爪と称す。これを瓦桟に掛けて墜落を防ぐなり。ひでん/碑伝
修験道の用語。修験者が山頂に登った時、自己修行のしるしとして、杖や木に自分の名前を記して立てること。 後にこれが石造化されて板碑となった。なお板碑は板碑伝に由来する。ひとて/一手
斗組において大斗より一段上にある斗組みの位置を一手なる語にて言い表す。ひとてさき/一手先
大斗から方斗が二つ重なるもの。ひととどうぐはありしだい/人と道具は有り次第
「人と器は有り合せ」に同じ。ひととびょうぶはすぐにはたたず/人と屏風は直ぐは立たず
(屏風は真っ直ぐには立たず、屈曲して立っている)ひとはおちめがだいじ/人は落ち目が大事
零落せる人を特に顧み助けるべきをいう。ひとばしら/人柱
堤防や橋などの工事の際に人を生埋めにすること。霊が工事を完成に導き、建物を強固にすると考えられた。 日本ばかりでなく世界的に伝わる話であるが、実際の習俗であるかは不明。 家畜の例もあるという。ひとのき/一軒
地垂木で飛垂木のないもの。本垂木という。ひとのいけんはしじゅうまで/人の意見は四十まで
四十歳以上の者は、自己の思慮に任すべし。ひとのにょうぼうとかれきのえだぶり/人の女房と枯木の枝ぶり
批評すべきものに非ずとの意。ひとざいもくになるな/人材木になるな
自己の主義もなく、只他人の道具に使はるる勿れ。ひとといれものはありあわせ/人と入物は有合
人と器はあるにまかせて間に合うものであり、必ずしも多くを要しないことをいう。ひとみ/人見
ひとみばりを見よ。ひとみばり/人見梁
店の上方に取付けてあるせい高き化粧梁をいう。人見梁の上方には昼間、店の戸を仕舞い置き夜間これを下ろしてしまりをなすなり。故に左右にある人見柱と称する柱には竪溝を設けるものとする。ひとみばしら/人見柱
「ひとみばり」を見よ。ひなどめ/雛留
両方の木幅を半分以内を留とし後を蟻ほぞに組合わせたもの。ひなたどめ/陽彫
小高彫たる彫刻にいう。ひなづか/雛束
「えびづか」に同じ。ひのき/檜
紀伊、土佐に良材多いが、最も有名なるは木曾産である。淡黄色で中心微かに赤みを帯び、 堅軟(けんなん)宜しきを得て工作に易く、水に浸しても腐朽(ふきゅう)の憂い少なく、 日に晒しても割れることなく、且つ光澤(つや)あって匂い香ばしき上等材である。 されば建築、造船、架橋、指物等を始め、木工用材として殆ど適せざるものがない。 尚、皮は屋根を葺き又縄を作るに用いる。針葉常緑の大喬木である。ひのき/ヒノキ
ヒノキ属には世界で六つの種があり、日本にはヒノキ・サワラの二種、中華民国に一種、北米に三種ある。日本のヒノキは緻密強靭で、木理は通直、色は高雅、耐久性があり、芳香はふくいくとして世界に誇ることのできる良材といってよい。その古名は真木(まき) と称した。 針葉樹を削った白木の肌の光線反射率は一般に広葉樹の二倍近い値を持ち、組織も均質でなめらか。白木の肌の美しさを誇り得るのは針葉樹 のみの特色だという。また、 飛鳥時代(この時代はクスノキが用いられた)を除き、(奈良、平安、鎌倉時代以後の)日本的題材もしくは伝統的な題材の彫刻はそのほとんどがヒノキであるという。 ヒノキは老化に対する抵抗が大きく、曲げ圧縮、いずれの強度も200年ぐらいまでは暫時増大し、その後徐々に低下してゆくが1000年ぐらいを経て新材と同じ強さに戻るという。 この現象はセルロースの結晶化と崩壊が並行的に進むだめだというが、ようするにヒノキの古材は硬くて強く剛となるが、脆く割れやすくもなるということである。、 一方広葉樹であるケヤキの強度は、→ケヤキの項参照。ひのくるまがまう/火の車が舞う
窮乏著しき形容。ひぬき/樋貫
鳥居の島木下の貫のこと。破風上の障泥板を貫きて取付けたる貫きをもいう。
ひねり/拈
扉を開閉するときの把手をいう。ひねりかけ/拈掛
雨押さえの漆喰をいう。それより他の材料にも同名を用いるに至れり。平家の屋根と二階屋の壁との接際などに拈掛を設ける。ひねりこ/拈子
切断面が正方形なる木の稜を正面に置きて作る格なり。ひねりと/捻り斗
皿斗に似た形式の斗。皿斗の皿板は薄い皿状だが、捻り斗の皿板は座布団状で肉厚。ひば/檜葉
檜に酷似する。あすなろとも称す。ひばた/樋端
敷居鴨居などの溝の縁をいう。ひびわれ/胼割
木材の割れをいう。ひはこ/樋箱
便所の床のあなをいう。その前方には金隠しあり。ひぶくろ/火袋
火のある一区域をいう。例えば石燈籠の燈火を点する所又は暖炉の薪炭を焚く所などの類なり。ひぶくらはぎ/樋部倉矧
板の矧方の一種なり。一方の板の傍を山形に凸に削り他板をそれに合う様に凹になして矧合すなり。杉戸などにこの矧方を用いる。ひめがき/女牆
稚ちょうとも書く。ひも/紐
切面半円程なる繰形。「紐付熨斗瓦」は熨斗瓦の接合部に紐あるものなり。これには無論紐漆喰を要せず。ひもしっくい/紐漆喰
瓦屋根の棟などに細長く塗りたる漆喰をいう。星漆喰に対する語なり。ひもつきのしがわら/紐付熨斗瓦
「ひもを見よ」。ひもろぎ/神籬
榊を囲いたる一囲の所にして、別に社などの如き建物は無けれどもそこに神を祀りたる所をいう。ひもろぎ/神籬
神の宿りとなる常緑樹の枝葉のことで、祭事の時の神座とする。神は平素は神奈備(かむなび・かんなび・かみなび) にいるが、祭祀に当たり降神の式と共に降って神籬に移るものとされる。異説としては、→祭壇とした石。樹林。榊。びゃくへい/百平
⇒ 露路ひょうたんからこまがでる/瓢箪から駒が出る
「睡壷から蛇が出る」の類。荒唐無稽の大言を吐くこと。びょう/鋲
「鋲」は二本字なり。小釘ににたれどもその頭は身の割合に大きく且つ半球形又は円板形をなすものなり。ひょうそう/表装
表具。書画を軸掛けや帖に仕立てる形式技法のこと。ひよしづくり/日吉造り
日吉大社に固有の形式で、正面三間、側面二間の身舎に、正面と側面の三方に庇を付けた平面を持つ。屋根は平面構成そのままに、入母屋造り、平入りの屋根を背面で切り落としたような形となる。→ごんげんづくり/権現造りひよけ/日除
「ひおおい」を見よ。ひょっとこ
おかめ・ひょっとこ。火を吹きおこしているうちにあのような顔つきになってしま ったといいます。→ひおとこ、火男。びょうせき/病石
庭石で上部の歪んだもの。 ⇒ 三忌石ひよどりせん/鵯栓
隅尾垂木と平尾垂木を差した栓をいう。ひら/平
側面を妻というのに対して正面を平という。垂木などの両脇の面をもいう。
樅の平割を略して樅平と称することあり。
普通といえる意義にも用いる。
ひらいし/平石
鉄平石。ひらいしん/避雷針
建物など雷災の起こることを避けるために設けたるものなり。ひらおれくぎ/平折釘
薄き折釘。ひらかべ/平壁
「ひら」を見よ。ひらかめ/平亀
「ひらたこ」に同じ。ひらからくさ/平唐草
平唐草瓦の略称なり。平瓦を以って葺きたる屋根の軒に用いる唐草瓦をいう。桟瓦の唐草瓦に対していう。ひらからもん/平唐門
側面に唐破風のある門をいう。正面に唐破風あるのは向唐門なり。ひらがわら/平瓦
付図において矩形をなし、横断面は弧状をなせる瓦をいう。その凹面を滑らかにし凸面には簓目を付す。これを牝瓦とも称す。ひらき/開
ふんばりをいう。鳥居などにおいて「柱の開」とは両柱が下方に至るに従い相距ること漸々多き場合にいう。「柱の転び」とは傾斜にして一本の柱に付いていい、「開」とは二本以上の柱又は器具の脚に付いていうことなり。両者自ら相違ありとする。蝶番又は肘壺肘金等にて開閉し得る様に取付けたる扉などにもいう。
ひらきしょうじ/開障子
蝶番にて取付けたる障子をいう。その蝶番は竪框と枠に螺旋止になしあるもにて扉の如く開くものなり。ひらきど/開戸
蝶番又は肘壺などにて開閉し得る様にとりつけたる戸。すなわち扉なり。ひらきばしら/開柱
開付きの柱。ひらきまど/開窓
蝶番を竪框と枠に取付けてある障子を有する窓。ひらぐろ/平黒
煉瓦の一つの長面が黒色なるものをいう。ひらくぎ/平釘
平たき釘をいう。ひらげた/平桁
勾欄中程の横木のこと。または柱上の桁のこと。ひらじろ/平城
近世になって誕生した。平地に構えられた城。掘や土塁で周囲を囲んで城が築かれた。城郭が軍事的、政治的中心としてばかりでなく、。経済の中心ともなってできた形。松本城、名古屋城など。→やまじろ/山城ひらじょいん/平書院
床脇の窓。ひらぞなえ/平具
平備とも書く。平面に付しある斗供の一組を平具という。以って隅に付しある隅具と区別する。ひらのき/平軒
登軒に対して屋根の下方なる普通の軒をいう。ひらのきつけ/平軒付
平軒の軒付をいう。前を見よ。ひらのし/平熨斗
割熨斗などに対して普通の熨斗瓦を称す。ひらのじ/平野地
反なき屋根の野地をいう。ひらのび/平延
隅延に対して普通の延びをいう。「のび」を見よ。ひらのみ/平鑿
幅広にして薄い鑿。ひらだこ/平蛸
地固めに用いる器具にして円く平たい石に縄を付し三四人にて使用するものなり。ひらひじき/平肘木
隅肘木に対して隅以外にある肘木をいう。ひらびょう/平鋲
頭の平円なる鋲。ひらぶち/平縁
断面が矩形なる薄き押縁木をいう。これを天井及び下見に用いる。相隣れる二室間の鴨居上があけはなしとなり居る場合に廻り縁に相対するものは下端が全体見ゆるものなり。これを平縁と称す。
ひらぶちてんじょう/平縁天井
断面が矩形なる薄押縁を有する天井をいう若しくは方形ならば竿縁天井となるなり。平縁天井は物置などの如き下等なる所に用いるものなり。ひらへいじゅうもん/平塀重門
普通の塀重門をいう。向塀重門と区別するために平字を冠することあり。ひらほぞ/平
幅に比較すれば厚さの薄いをいう。指桁などに用いることあり。之を大根と称する人あり。ひらみず/平準
水平に同じ。ひらめじ/平目地
煉瓦積みなどにおいて平なる目地をいう。覆輪目地に対す。ひらもの/平物
板をいうか。番匠往来に「角物、平物、末口物、丸太、完料、板子、槫木」と木の種類を列挙しあり。ひらもん/平門
「屋上を少し平に作りたる門なり」と家屋雑考にあり。少しくは疑わし。ひらや/平屋
単層の家をいう。ひらやすり/平鑢
金属の表面を摩するために用いる道具にして目立鑢に比すれば截痕少しく大なり。ひらやだて/平屋建
「ひらや」に同じ。ひらやまじろ/平山城
山城から平城への過渡期に築かれた城郭。平地の丘陸上が立地に選ばれ天守も建設された。近世において最も一般的な形式で、姫路城、石川の金沢城、熊本城など。ひらわり/平割
機材の出来合品にして長さ一間幅四寸以上暑さ一寸三分程あり。之を樅平ともいう。戸障子などにこれを用いる。ひりょうぼく/肥料木
樹木の生育を助けるために材木と共に植え付けるもの。根粒バクテリア作用に依存する。ひるかぎ/蛭鉤
「ひるかん」に同じ。ひるかん/蛭環
釣鐘又はランプ等をつるすため天井などに取付けたる鈎をいう。ひるこ/蛭子
左は小池佐太郎の毛筆画習作。 手本にしたと思われる絵は 国立国会図書館デジタルコレクション『萬物雛形画譜』 の 4 に収載されています。ひるこ/蛭子
どうして「えびす」と読むか。→えびす/恵比寿 参照ひるこ/蛭子/水蛭子(ヒルゴ)
彫刻には神話を題材にしたものが数多く存在しますが、神話の手がかりとなる 書物は八世紀初頭の奈良時代に全文を漢字で書かれた古事記と日本書紀だけなのだ そうです。しかし記紀はその時代までに語り継がれてきた神話や伝説を、つぎはぎに取り入れているため、高天原神話、出雲神話、筑紫神話が混合されて描かれています。さらに大和朝廷の政治的意図も加えられています。ともあれ水蛭子のくだりは古事記や日本書記の冒頭など、オノゴノ島における国生みの神話に(僅少かつ場所や順序や内容が不安定に10箇所ほど)登場するそうです。(以下はあらすじ) 天地(アメツチ)の初めのころ高天原に現れた神は アメノミナカヌシノ神とタカミムスビノ神とカミムスビノ神の三柱(みはしら)でした。 その頃の国土はまだ若くて脂のように漂っていました。 そこで神々は、(さまざまな神が現れましたが)やがて男神イザナギノ命と 女神イザナミノ命が現れると、二人に国を産むことを命じます。 イザナギとイザナミは天(アマ)の浮橋(梯)に立ち、授けられた玉の矛で海をかき回 します。すると、矛の先から潮しずくが垂れて固りオノゴノ島ができました。 二人は島に降りて、柱を巡り廻って出会いの唱えごとをするという婚姻儀礼の ようなものをした後で共為夫婦(溝合・ミトノマグワイ)をしました。 その結果(最初の子として)蛭子が生まれますが、(蛭子であるがゆえに)葦の船に 載せて流してしまいます。次に淡島を生みますが、これも(淡であるがゆえ)児の 数には入れられませんでした。 蛭という語には手足が萎えた不具という意味があるそうで、淡にもアハムなどのよくない 意味があるそうです。兄妹近親婚による初産児で、不具児であったため棄てられて しまう蛭子の存在には、未開の社会にタブーなり結婚上の規範を教える意味が あったのかもしれません。そんな不具児説がある一方では、太陽の子としての「日る子」 太陽説もあるそうです。 さて、この水蛭子がどうして恵比寿に関係があるかという理由はえびす/恵比寿についてをご覧ください。 さらに逸脱してしまいますが、 この神話を比較神話学ではその生殖によって万物が誕生する神話の類型とみる見方や、 現人類の始原を説く神話との関連をいう説もあったりするそうです。ようするに、 イザナギとイザナミがもし大洪水の後に僅か生き残った兄妹だったとしたら、その 生殖行為は本来許されるべきではないけれど、人祖としての正当性は神話の中には あるわけです。だから、その行為を正当化する手段として男尊女卑の教訓が組み入 れられたのか、神話そのものが歪曲されたのかもしれません。この神話が描かれた 時代には、すでに古代の母権制社会が壊され、中国思想の影響による男権社会が 確立していたそうですから。 間違った婚姻儀礼を行ったことが原因で蛭子と淡島を産むという失敗をした イザナギとイザナミのその後ですが、正しいとされる婚姻儀礼の後に ミトノマグワイをして、多くの島や神を生むことに成功しています。 それよりも、この神話において最も興味深いと思われる個所は、 イザナギが「汝が身に何の成れるところ有る?」と訊くとイザナミが「吾が身は成り 成りて成り合わざるところ一処有り(吾が身に一の雌の元という処有り)」と答える ところです。その単刀直入で寛容なところは日本人特有なのかもしれません。 日本書紀など国生み神話に関する本を拾い読みしてみましたが、錯綜していて理解 にはほど遠い状態です。しかし神話というものは、大昔の民族の体験や願望を想像し、 思い思いの夢を巡らせることができればそれでよいのだと思います。ひるまゆ/蛭眉
頭貫、虹梁、などと柱との接際部分において設けたる决りをいう。その他総て彎曲なる短い眉を称す。ひれ/鰭
懸魚の左右に付しあり彫刻。その絵様の種類により雲、渦、若葉等の名称を冠す。又鬼板の左右にある足元をも鰭と称する人あり。ひれい/比禮
鞭掛即ち小夾小舞を比禮と称する人あり。ひれいた/鰭板
「はたいた」の誤。ひれがわら/鰭瓦
鬼瓦の左右なる足元をいう。ひれをいう。ひろえん/広縁
「ひろびさし」を見よ。ひろしき/広敷
婦人用の広間をいう。ひろびさし/広庇
寝殿造りにおいて身舎の外側なる一段低き縁側様の所をいう。之を広縁とも称す。その外方に更に低き簀縁あり。ひろまもの/広間物
宮殿堂社等に用いる大形の瓦をいう。大阪瓦に同じ。ひろごまい/広小舞
軒先垂木上端に取り付くもの。ひなづか/雛束
床の間の違い棚の上下の棚の間に立つ小さな束。海老束(えびつか)ともいう。びゃくだん/白檀
インド・ジャワ、チモール島などに産する熱帯性の樹木。半寄生の常緑小喬木で樹高は10メートルぐらい。それを土中に埋めると辺材が腐朽して心材のみが残るが、これを一般に白檀と呼ぶ。淡黄色または淡褐色で堅緻で重く、芳香が強い。材を蒸留すると白檀油が得られるほど油脂分を多く含む。美しい光沢があるので精密な加工が可能で彫刻に適する。で、法隆寺の仏に奉った諸珍財のなかに白檀の和名である栴檀(せんだん=と読むがセンダンとは異なる木→センダン参照)の名があることから、西暦671年には、この材が香木として輸入されていたことがわかるという。そもそもインドで生まれた仏教には汗の臭いを香木で消す習性があり、それが貴重なものとして日本に伝えられたというのだが、結果して、もとの彫刻が白檀で作ってあったのだから、彫刻というものは白檀で作るものなのだという理屈で、この時代(飛鳥時代)の彫刻材の選択の条件としては、まず第一に香りの高いことが揚げられるようになったのだともいう。しかし、日本には白檀がないため、邦産の香木であるクスノキが彫刻の材料して用いられたのだと。→クスノキ。→蘭じゃ侍。ひょういたくせん/憑依託宣
キツネの霊などの神霊が人に乗り移って神の言葉を伝えること。 奈良時代末に陰陽師などの間で「稲荷おろし」などが流行した。ひゃくもしょうちにひゃくもがってん/百も承知二百も合点
すべて熟知する所。びわいた/琵琶板
太平束又はかえるまたなどに接したる板をいう。ひわだ/檜皮
「まいはだ」に同じ。ひわだぶき/檜皮葺
檜の皮にて葺きたる屋根。ひわだぶき/桧皮葺
桧の樹皮を細かく裂いたものを葺足を短くして竹釘で葺いてゆく屋根のこと。ひわれぼうしざい/干割れ防止剤
この写真とは別の部材に干割れ防止剤の試し塗りをして塗師屋さんに漆を塗ってもらったところ、支障がないとの報告を受けましたので、この写真の部材にも漆塗りの下処理として干割れ防止剤を塗布しました。 薬剤を塗布するとつやが出て、ケヤキ特有の赤い木目が際立って豪華な感じになります。手垢等の汚れ防止にもなるようです。なお、目の細かいサンドペーパーでこすれば、ケヤキの表面は元の状態に戻ります。寸法の狂いとヘアクラックの発生を防止するため、ケヤキ材に干割れ防止剤を塗布してみました。薬剤は木材の表面に皮膜を作らず、内部に浸透して軟らかく硬化するため塗布後もカンナ加工することができます。
ぴんからきりまである
賭博から出た言葉。びんごおもて/備後表
「たたみ」を見よ。びんた/鬢太
「びんづら」に同じ。びんたどめ/鬢太留
「びんづらどめ」に同じ。びんづらとめ/髭面留め
土台隅等に用いる仕口で一方の木よりも髭面を残し留にする仕方。びんちょうたん/備長炭
備長は和歌山県田辺氏の炭問屋、備中屋長左衛門の略。原料はウバメガシ。 炭には白炭と黒炭があり、備長炭はできあがる直前に真っ赤な状態(1000℃)から窯から出し、「消し粉」を かけ空気を一気に遮断して作る白炭。叩くと金属音がするほど硬い。和歌山県産ではない備長炭、中国産(アオガシ)の備長炭もある。茶道には、600℃で焼かれ窯の中でゆっくり冷やされた黒炭が用いられる。兵庫県の池田炭(原料はクヌギ)が有名。