き
大工の符牒。九のこと。き/木
樹の皮及び甘皮を除きたる残りの部分。又皮付きのものをもいう。 /『木はいきなり、出るなり、上を略せり、又、気のおひ出る意』(日本釈名)きいしばい/生石灰
石灰石を焼きて出来たるままのもの。きいたふう/利いた風
気の利きたい風の意にて、生意気半可通なる者を利いた風をするなどという。きうら/木裏
樹芯に近いほうの面。きうら/樹裏
樹木に対して光線の当たる裏側のこと。当たる部分が樹表。きおもて/木表
樹皮に近いほうの面。化粧の面になる。挽き立てた板で幹を中心に向こう側が木裏、反対が木表。
きおもて/木表
美女(べっぴん)を指して云う。(東京近傍で使用されていた大工の符牒)きおい/木負
茅負と平行な化粧垂木の載るもの。→(かやおい/茅負)きおいおろし/気負卸
縁側の幅を定める一方にして上飛燕垂木の下にあるもの。きおいした/木負下
縁側の幅を現方にて木負から垂直線にて切ること。きおおつ/黄大津
壁の上塗り用の土にして黄粘土に礪灰とすさをまぜたるもの。きおおつしばり/黄大津縛
略して大津縛ともいう。ぎおんづくり/祇園造り
神社本殿で切妻造りを基本とするが、やがて仏堂のような入母屋造りの本殿も現れてくる。八坂神社本殿は、本殿と礼堂をひとつの入母屋屋根の下に納めた、特異な形式なもので、八坂造りとも呼ばれている。→ひよしづくり/日吉造りきかいどうつき/機械胴突
上方に滑車を設けてそれに網を掛けて、その両端を多数に分岐し多人数にてする胴突。きかいねり/機械練
手練に対する語なり。モルタル又はコンクリートを混合機械にて混和すること。きがた/木形
鋳物の扉又は手摺等を作るとき先にその通りに木にて作りたるものをいう。きがため/木固
普通「木堅」と書く。塗師の語にして木地へ直接に漆を塗ることをいう。きかぶにもものきせよ/木株にも物着せよ
馬子にも衣装と同じ。きがら/木柄
土蔵などの木部をいう。きからおちたさる/木から落ちた猿
木を離れたる猿の如しともいう。頼む所の位置より離れてせんすべなきに喩う。きがらし/木枯
木を乾燥させること。「木殺」ともいう。きがわら/木瓦
木製にして瓦の如くみせたるもの。ききちゃ/利茶
「利き酒」と同じく、茶の品質や銘柄を感覚で当てること。昔は賭け事の対象にもなった。ききしんわ/記紀神話
(彫刻)「古事記」と「日本書紀」に載せられた天孫降臨を中心とした神話を総称して言う。 藤原不比等(659-720)。天皇の絶対権力確立のための神話というのが通説。 屋台の彫刻のモチーフとしても用いられています。きく/菊
十六葉の八重菊は皇室の紋であり、その使用に関する厳重な制限があったためか、 桐と並んで格調高く高貴なイメージを持ち、晴着の柄には人気だという。一方、 菊は葬式に使われ、長く持つために病気見舞いには避けられ、殺虫剤の原料にもなる。 屋台の虹梁に装飾彫刻される文様は、どれも「若葉」と呼ばれますが、 若葉に菊が彫られている場合の虹梁の文様だけは、「菊唐草」といいます。きくがわら/菊瓦
菊紋付の丸瓦。きくぎ/木釘
木製の釘。きくと/菊斗
鬼斗や隅斗に同じ。きくざ/菊座
六様などにつける菊形の座のこと。きくざびょう/菊座鋲
菊座付の鋲。きくまるがわら/菊丸瓦
菊瓦に同じ。きごうし/木格子
木製の格子をいう。きごうしまど/木格子窓
木製格子付の窓。格子入りの窓の内格子の木製なるものなり。きごまい/木小舞
化粧に使用する竿縁のようなもの。きごろし/木殺し
仕口の周囲を大玄翁で叩いて木を沈めているところ。木材を隙間無く接合するための技術です。きこん/気根
aerial root 枝幹から生じ大気中に露出している根のこと。養分を得るためではなく樹体の支持用と考えられている。きさ
木理の模様をいう。古語。きじ/木地
木理のままなるをいう。即ち塗料を施さざる木を称す。塗師職の語にして塗下地をいう。前者は塗料を塗らざるもの後者は塗料を竣つものなり。
瓦、煉瓦、等を製するとき土にてその形を作りて未だ焼かざる前のものをいう。素地と書く。
きじこししょうじ/木地腰障子
「こししょうじ」を見よ。きじし/木地師
椀や盆などの木製品を作る人たちのこと。きしな/木品
木の品位をいう。きしちたけはちへいじゅうろう/木七竹八塀十郎
木は七月に切り、竹は八月に斬り、塀は十月に塗れば久遠に耐えるという教え。(甲子夜話) /樹木は7月(陰暦 以下同)に伐るのがよく、竹は8月に伐るのがよく、塀(土塀のこと)の 修理は天候が定まっているので10月頃がよいという農家に伝わる古来の諺。 木六竹八塀十郎という地方もある。きしぶ/生渋
豆柿を搾りて得た汁を生渋という。これを得た後、水を加えて再び搾りて採りたるものを二番渋という。きしぼじん/鬼子母神
千人の子持ちの鬼子母神(印度の女神)は自分の子供を育てるために他の幼児の命が必要であった。 釈迦が鬼子母神の末子を隠したところ、彼女は我が子を奪われた母の悲しみを覚り「全ての子を守る」と懺悔して釈迦に許された。 鬼子母神は赤子を抱いた美しい容姿で手にはざくろ(吉祥果)の実を持った姿で現れる。 愛児、安産、和合の神。きじんぐち/貴人口
茶室においても、はじめに通常の出入口があり、利休が「にじり口」を考案したことにより 一般人は「にじり口」より身をかがめて出入りすることが作法になったが、 貴人が身をかがめなくてもよい通常の出入口を使用したことから、 通常の出入口を貴人口と呼ぶようになったとか…。きずり/木摺
漆喰を支持するために設けたる貫をいう。木摺りは三分明き程にするを宜とする。また幅は一寸程なるを適当とする。きそ/基礎
「いしずゑ」に同じ。きそしき/基礎式
「そせきしき」を見よ。きたやままるた/北山丸太
京都の北方の山より産する杉丸太をいう。きちょうめん/几帳面
面の一種にして図の如きものなり。几帳の柱に多く用いられる故称する。建物の柱などにこの種類の面を用いることが多い。きづくり/木造り
木を要する所の形に造ること。きづくりはじめ/木造初
釿初に同じ。きっこうがた/亀甲形
六角形の模様をいう。石面仕上げの一種にして江戸切の鎬付のもの。
きったて/切立
梁等の重い物を支えるときに使用する丸太または柱。きつねこうし/狐格子
破風の内側に設けた格子をいう。縦横の格子の裏に板を張ったもの。ほとんどが入り母屋造りに 用いられる。名前の由来は木連れが訛ったものとも言われるが定説はないという。きつねど/狐戸
柧戸よりの転訛なり。「つまど」を見よ。きつれごうし/木連格子
「きつねこうし」を見よ。 つまこうし。きどうろう/木灯篭
屋外照明用の木製灯篭。利休灯篭のこと。きどり/木取り
大形の材木より小形の木を得ることをいう。即ち大角を挽割りて柱その他の木を得ることなり。広島近傍においては垂木掛、根太掛、板掛、等の如く総て他材の端を支承しえる木をいう。
樽桶などに充用する木のこともいう。
原木または半製品を製材するにあたって、目的とする用材を最も 有効に採材の位置や製材の手順を決めること。
たとえば一辺5寸の正角、四方柾の芯去り用材を採るためには、末口2尺に近い原木が必要なることがわかる。
きどもん/木戸門
質素なる門にして中等の家などに普通にあるもの。多少の相違はあれども屋根と腕木を有する。「腕木門」ともいう。きどをつく/木戸をつく
沮格すること。(そかく=じゃまをすること、防げること)きにたけをつぐ/木に竹を接ぐ
似つかわしくないものを接合すること。不調和なる喩。きにつく/木に就く
死して棺の中に入るをいう。きにつくむしはきをかじり かやにつくむしはかやをついばむ/木に付く虫は木を齧り萱に付く虫は萱を啄ばむ
物各好む所あるをいう。きにもかやにもこころをおく/木にも萱にも心を置く
世を憚りて用心すること。「木にも草にも心を置く」に同じ。きにもちのなるよう/木に餅の生るよう
非常に都合よくうまき事をいう。きによりてうおをもとむ/木に縁りて魚を求む
手段と目的を相応せずして、到底効を奏し難き喩。きにんぐち/貴人口
茶室の客入り口のこと。きねづか/杵束
上下の両端に杵形の造り出しのある小屋束。杵=餅などを臼に入れてつく道具。 昔とった杵柄(きねずか)=過去に鍛えた腕前のこと。きぬかけ/衣掛
「うまや」を見よ。きぬき/気抜き
空気を流通するため、又は臭気を排除するために設けたる孔もしくは装置。きねづか/杵束
上下の脹らみ足る束をいう。きのえまち/甲子待
江戸時代、暦が甲子の日、子の刻(午前1時頃)まで起きて大黒天をまつり、商売繁盛を願う「講(信仰や無尽の集まり)」で、夜のお供えとして大豆、黒豆、二股大根を縁起物として供えたという。彫刻の図柄で鼠や二股大根が表されている場合、生殖が豊かな実りをもたらすという信仰に基づく神聖な祈りが様式化している可能性がある。きのかわふんどし/木の皮褌
用に堪えないもの。きのねはもと/木の根は本
木の実は木の本(もと)の転訛なるべし。きのはしのようにおもう/木の端のように思う
無価値な木屑のように人を思うこと。(枕草紙や徒然草を参照のこと)きのぶんか/木の文化
日本は木の文化を継承してきました。 木を加工するためには刃物が必要です。 良く切れる刃物でなければ良い仕事はできません。 大工が年がら年じゅう刃物を研いでいることからわかるように、木の文化は刃物と砥石が支えてきたのです。 さて、刃物も砥石も使えば減って、やがてなくなってしまいます。 が、それが良いものであれば、同じもの(その時代の流行は加味されるでしょうが)が作られてゆくので、 モノとしてなくならないし、それらを作るための技術も様式として継承できるわけです。 即ち、木の文化とは「良いものを直して使う」ということにほかならないのでは。きばな/木鼻
鼻とは端のことのこと、木の端という意味である。 柱などから突き出ている個所、あるいは突き出しているように見える虹梁など水平材の先端であり、 何らかの刳形や彫刻などの装飾が施されているもののことを指す。山門の木鼻。
山車の木鼻。
(猿頭の决れた部分は「顰(しがみ)」という)
屋台の土台の木鼻。
山車の土台の木鼻。
(小池清が彫った最後の木鼻になってしまった)
屋台の腰組物の木鼻。但し、木鼻と称することはなく「拳鼻」(こぶしばな)という。
これより上の写真は、横木の端に装飾彫刻を加えた木鼻であるが、これより下の写真は、木鼻が水平材とは別の木で造られていて、 蟻落しなどの仕口によって柱などに取り付けられている木鼻である。なお、そのような木鼻を建築物では「掛鼻」と称することもあるが、 屋台には別の「掛鼻」なる部材があり紛らわしいので、本来は掛鼻であるところの木鼻も木鼻と称している。
屋台の腰組物の木鼻。
屋台のいわゆる木鼻。
上組物下端の柱に取り付く。 その形状によって「獅子鼻」「象鼻」「獏鼻」などの名前で呼んで区別している。
玄関に飾ってある獅子鼻(早瀬利三郎作)
「獏鼻」という名前の木鼻。
同じく鼻が特徴的に長い「象鼻」なるものがあるが、それとはどのように違うのだと 思うむきがあるかもしれない。 獏鼻と象鼻には、目と眉とヘアの形に明らかな相違がある。 獏の目はそら豆型で丸くて大きく刺状の眉があり多毛で襟足がカールしている。 象は切れ長か三日月型の目を持ち、眉がはっきりしていない。
きばなのざいりょう/木鼻の材料
木鼻の材料は、柱に取り付けるための仕口を設けた状態で木取りを行い、木彫師さんに引き渡します。 (写真は振面木鼻の材料で樹種はケヤキ)きばなのへんせん/木鼻の変遷
page258 引用 〜 改めて述べる迄もない事だと思うが、木鼻を故意に柱等から出して、 その先に彫刻をして装飾に用いたのは、鎌倉時代から宋国から移入した唐様或いは 天竺様建築に始まり、それが忽ち前代から伝わった平安建築、即和様建築に影響し、 従来柱一ぱいに木の先即鼻を切って了ったのを、今度は殆ど如何なる場合も 柱一ぱいに切らず、必ず先に出してそこに何等かの彫刻をつける様になったのである。 木鼻を出した和様建築が鎌倉初期からあるのでみると、如何にそれが建築界を風靡し、 当時建築を専門とする大・中・小の区別なく、争って自分の設計した建築へつけたろう。 その結果、初めは唐様木鼻の側面に渦文を一つほった位、天竺様では単にぐりぐりの 配線の様なものを木口に刻んだだけに止まったのが、急激の進歩発達をなし鎌倉末には 既に相当なところので進歩をした。そうして室町時代に入ったのであるが、室町建築は あらゆる点において鎌倉の系統であるので、従って木鼻も亦、前代のが少しきゃしゃに なった位であった。即主として唐様風のものも多く、その側面にもいろいろ込み入った彫刻をする様になり、 最早渦文一つ位では、況や無地では余程特別の場合でなければ満足しないようになった、 それでここに記そうと思うのは、思い切って木葉を一面に彫刻した例で、どれもこれも よくもこう自由自在に彫刻したものだと、洵に感心させられるのである。
この頃の新しい社寺建築に於ける木鼻彫刻は、大概象・獅子・牡丹・蓮・雲等であるが、 初めにはこんなものはなかった事勿論である。その発達の跡を辿ってみると、大体次の 様であったらしい。即
天竺様木鼻より | 象・獅子・猪・龍 等 | 動物化 |
唐様木鼻より | 木葉・牡丹・菊 等 | 植物化 |
雲・波 等 | 天然物化 |
(天沼俊一著 成虫樓随筆 続続 国立国会図書館デジタルコレクション)
筆者が絶賛した木鼻は、和歌山県の鞆淵八幡神社(ともぶちはちまんじんじゃ)と思われる。
忽ち(たちまち)・皀へんに卩 [皀卩](つく→即(「すなわち」と読ませている?)) ・了る(おわる)・點→点・亦=又・況や(いわんや)・洵に(まことに)・計り(ばかり) ・謂わゆる(いわゆる)・寶相花=宝相花=宝相華(唐草文様)・併し(然し しかし) ・漸く(ようやく)
きはひのき、ひとはぶし/木は檜、人は武士
「魚(うお)は鯛」と同じ。きはもとから/木は本から
本(もと)大なれば末大なり、何事も本が大事なりという喩。きひいてはいのこる/木引いて灰残る
薪を取り去れば、後に灰のこるという意。詳細不明。きぶし/生節
固く付着しえる形の表れたる節をいう。きぶつかなぶついしぼとけ/木佛金佛石佛
無情冷淡の人をいう。ぎぼし・ぎぼうしゅ/擬實珠・擬母子・擬宝珠
勾欄柱の頭。高欄の隅や端に立てられた親柱(擬宝珠柱)の頂部に付けられた宝珠型の装飾のこと。玉と玉台から成り、木、真ちゅう、青銅製のものがある。この部分に寄進者の名などが書き込まれていることがあるため、年代判定の史料となることもある。
ぎぼしゅこうらん/擬宝珠高欄
@擬宝珠A宝珠柱(ほうじゅばしら) 親柱
B架木(ほこぎ)
C平桁(ひらげた)
D地覆(じふく)
E斗束(ますづか)
Fたたら束(木へんに而)
ぎぼしゅこうらん/擬宝珠高欄
擬宝珠高覧組立中柱→擬宝珠高欄
最上の円形断面の水平材→架木(ほこぎ)
中央の水平材→平桁(ひらげた)
最下の水平材→地覆(じふく=土台を意味する言葉)
地覆の下部の刳った部分→水繰(みずぐり=排水の目的で繰るもの)
地覆(じふく)の仕口
架木(ほこぎ)と平桁(ひらげた)の仕口
擬宝珠高欄(ぎぼうしゅはしら)の仕口
断面を円形に加工する前の状態です。
回転させて擬宝珠柱に固定します。接着剤を付けてはいけません。
ぎぼしゅばしら/擬宝珠柱
きまもり/木守り
果樹採取の際、全部を取らず枝端に2〜3個の実を残しておくと翌年の結果がよいという。 その「残しておいた2〜3個の実」のこと。『木守の柿さやかなり後の月』(寸木の俳句)きむね/木棟
木製の棟をいう。きもいり/肝煎
世話焼に同じ。肝煎大工は現場において小方を指揮する大工をいう。きもとたけうら/木本竹末
木を割るには本(もと=根元)より、竹を割るには末(うら=先端)よりすべきをいう。きもん/鬼門
陰陽道によるもので、北東の方向「艮」ウシトラのことである。 この方角については忌み嫌う慣習がある。 『黄帝宅経』に「方位からいうと、北西が天門、南東が地門、南西が人門、北東 を鬼門として、鬼門は宅のふさがりなり、帰缺薄にして空荒なれば吉なり、之を犯 せば偏枯淋腫等の災いあり」と。また「鬼門は龍腹にして福嚢なり、宜しく厚しく して実重なるべければ吉なり、缺薄なれば即ち貧窮す」と記されている…らしい。陰陽道が確立したのは平安京の頃。都の鬼門にあたる北東に延暦寺を建立して国家 鎮護の法を修したという。当初の鬼門は都城の鎮護として起こったのであるが、 やがて家相の中に鬼門が入ってゆくのである。家相は桃山時代か ら江戸時代にかけて完成したという。家相には「鬼門」とか「裏鬼門」があって、玄関は南向きがよい、台所の西向き はよくないとされる。鬼門に便所をつくるのは大凶とされるが、家相では便所の 方位をはっきり示していないのである。(そもそも建物の中には便所がなかったか ら?)このように方向に善悪の観念を与えることが家相の方位や吉凶で あるが、少なくとも「鬼門」は家相の門ではないのである。『家相秘伝集』・『家相大全』。家相を五行説にあてはめているわけであるが、元来 が科学ではなく、気分の学問であるから、見る人の見識に任せて定めなければならな いのであろう。(参考図書「日本建築」・「和洋住宅別荘建築法」・山田幸一著「物語ものの建築史」 より要約及び抜粋)
きもん/鬼門隅
東北隅をいう。きもんきり/鬼門きり
庭に石を据えるとき長い石を家の棟と直角になるように据えてしまう古来好ましくない石組のこと。棟切り、棟割。きもんばしら/鬼門柱
東北隅の柱。きもんこんじんわれよりたたる/鬼門金神我より祟る
鬼門又は金神が祟りをなすに非ずして、皆自家の不謹慎により、禍害を蒙るなりとの義。きもんよけのおにがわら/鬼門除けの鬼瓦
醜悪なる容貌をいう。きゃくだたみ/客畳
「茶室」。ぎゃくれんとう/逆蓮頭
勾欄擬實珠の反対に、下を大きく蓮の花形に造る。 「さかばす」のこと。きゃたつ/脚立
高い所の仕事をするために用いる道具にして職工はその上に乗るものなり。「足場」は取り付けるもの「脚立」は移動し得るものなり。 tresleきやり/木遣
力を揃えるため囃すことをいう。きゅうしゃくにけんにとがいちまい/九尺二間に戸が一枚
貧居の形容。「九尺二間」ともいう。きゅうすい/給水
飲料水などを供給することをいう。きゅうすけ/久助
下男をいう。「久三(きゅうざ)」、「久七(きゅうしち)」も同じ。きゅうだい/弓台
茶室用語・台子(だいす)の一種で脚が2本(通常の台子は4本)。本来は「及台」と書くべきもの。きゅうでんつくり/宮殿造り
寝殿造りに同じ。きゅうはままつしのししょう/旧浜松市の市章
平成17年7月1日、旧浜松市と遠州地方11市町村の編入合併によって使われなくなった市章です。旧浜松市の市章は「浜の白波と松の緑」がデザイン化されていました。平成18年4月現在、浜松市の所有する「浜松市屋台」には、正面の鬼板彫刻と水引幕と錺金物の部分に旧市章が採用されており、新市章に取り替える計画も出ているようです。
[その後]平成23年3月16日、浜松市所有の屋台に早瀬宏氏の彫られた新市章付き鬼板が取り付けられました。水引き幕も、紋の部分が旧市章から新市章に変わっていました。なお、旧市章の描き方は浜松市の施工細則に載っていたのですが、新市章の描き方は存在しないようです。
きゅうはままつしのししょうをもちいたおにいた/旧浜松市の市章を用いた鬼板
浜松市の所有する「浜松市屋台」から取り外した正面鬼板(早瀬宏作)です。
鬼板に円筒状の何かがくっついているわけではなく、漆と金箔で装飾された市章部分も獅子と一体の彫り物です。 欅で作られた鬼板の下端は破風に合わせて整形され、ダボが埋め込まれています。
この鬼板は旧市章のデザインを形成している盛り上がりを除去、平滑にし、 替わりに別体の現市章が貼り付けられる見込みです。(平成23年1月現在)
きゅうびのきつね/九尾の狐
妖婦に喩う。殺生石の俗説にもとづく。きゅうべえ/久兵衛
魚類をいう。盗賊語。きゅうぼくはほるべからず/朽木は彫るべからず
人の志気昏惰にして、教の施し難きに喩う。きゅうりゅう/穹窿
もと青空の意に用いたるが後にそれに類似の形即ち半球形なる天井の意にも用いることとなれり。きようびんぼうひとたから/器用貧乏人宝
細工貧乏人宝ともいう。人のために重宝がられて、おのれ窮困するをいう。きょうかすいげつ/鏡花水月
〜 鏡にうつれる花、水に宿れる月し、眞に持って眞にあらず、見るべくして取るべからず。〜きょうたろう/京太郎
尾張にて、通人顔する男、又は分に過ぎて衣服を飾る者をいう。きょうじ/經師
壁障子等に紙を貼る職人をいう。きょうぞう/経蔵
仏教経典を納めた蔵。古代寺院では鐘楼と経蔵は講堂の前方左右に配置された。きょうのおちゃづけ/京のお茶漬け
京人は吝嗇にて、客の去らんとするに臨み、茶漬にても食ひ行けと挨拶するとの意。 「京の人は煮豆を食わぬ」(袖口が擦り切れるのを忌むため)きょうのなまだら/京の生鱈
珍しきものの喩。きょうのまき/經の巻
獅子口上にある三つの筒形のものをいう。きょうのゆめ、おおさかのゆめ/京の夢、大阪の夢
夢物語をする前に、 かくいひて後に語るものなりといへり。 (直訳すれば、自分の夢を語る前に「○○の夢です」と唱えなさいということ。 なにかの喩えになっているのか、オチがわからないところが意味深。)きょうま/京間
平安京で用いられた地積の単位で一町四方300尺の60分の1を1間としたことに始まる。 約191cm=曲尺6尺3寸が京間の1間に相当する。(田舎間=約182cm=曲尺6尺=1間) 長さ6.3尺×幅3.15尺きょうのまき/経の巻
獅子口の上にある三〜五つの軒丸瓦。経の巻の下にある筋を綾筋(あやすじ)という。獅子口の起源は中国らしいが不詳。きょうろ/京呂
柱上に軒桁を架けた後、その上へ小屋梁を載せたもの。きよかんなのしき/清鉋の式
加工したる木材を改めて清浄する式禮なり。祭壇の前に棟、柱、など七本横たえ並べ置くなり。ぎょうてんひ/仰天皮
苔のこと。きょうりん/杏林
賢者をいう。ぎょくだい/玉台
「たまだい」及び「たまざ」を見よ。ぎょくしょう/玉将
〜 玉将につきての俗説いわゆる番太郎馬の一方は玉あれど、一方は王とあるがために、 局に対する時、貴き人の方へ玉という字の馬を興ふるは禮なり、 などゝいへる俗説あり。〜 幸田露伴『碁と将棋』
きよばり/清貼
襖又は壁に紙を貼る場合にその上貼の下と袋貼りとの間に貼るものなり。きょうぼく/[木へんに共] 木
墓地の樹木。きょうぼく/喬木
喬木は高さが数十尺から数百尺に達する背の高い木のことを指し、 喬木にも落葉樹と常盤木(ときわぎ)の区別がある。喬木に対して潅木(かんぼく)という言葉があり、 潅木は庭木として多く植えられている低木のことである。 富士山、御嶽、駒ケ嶽、白山などの高山に登ると、山の半腹以上は、 潅木ばかりで成り立っている。
ウキペディアによれば、喬木や潅木は太平洋戦争以前に使われていた用語で、 喬木は樹高が3m以上のものを指し、現在では高木(こうぼく)と表記されているとのこと。 そして潅木あるいは低木という言葉は、植物学の用語。成長しても3m以下の木を指すそうだ。
きょとすけ/きょと助
大阪にて慌て者をいう。「きょと作」も同じ。きょはきをうつす/居は気を移す
人の心は居所の影響感化を受ける。[孟子]きょねんうえたかきのき/去年植えた柿の木
ならぬ喩、京の町、去年植えた柿の木ならぬ事仰せあれ、いやいやならぬこその本あれ。きり/錐
穴あけに使用される工具であるが、古代には発火道具の火きりとして使用されていた。舞錐、打錐、壺錐、鼠錐、中心錐、貝形錐、螺旋錐などあり。
きりいし/切石
正しき形に仕上げたる石をいう。きりいしつみ/切石積
切石にて積上げたる壁にいう。きりうらごう/切裏甲
短い木口を現わして裏甲としたもの。きりおとしぐち/切落口
土蔵などの二階床に切あけたる穴にて揚蓋を設けてありこれを除けば荷物の揚卸しをなすことができる。きりかけ/切掛
古語なり。鎧板付の塀若しくは衝立をいいたり。これ下司用にして貴人には立蔀を用いたりという。 /昔の庶民の家に通常あり中庭の坪に立てて目隠し用途。移動式のガラリのついた塀のようなもの。きりかえす/切返す
モルタル又はコンクリートを混ぜるときしょべるにて一方より他方へ漸々に打返し行くこと。きりかしらくぎ/切頭釘
図の様な釘をいう。きりかぶにもいしょう/切株にも衣装
衣装の如何によりて、風采に高下を生ずるに喩う。「馬子にも衣装」きりくぎ/切釘
無頭の釘をいう。きりくみ/切組
柱梁等諸材をその位置に取付ける前に必要に応じてを作り穴を彫りその他仕口等を準備することをいう。きりさげなわ/切下縄
塗家において漆喰の剥脱を防ぐため所々に縄を下げかつ塗込むものなり。これを切下縄という。きりさす/切さす
茅屋根の合掌のようなもの。きりすぎまるた/切杉丸太
杉の切丸太をいう。「きりまるた」を見よ。きりすみ/切墨
規矩法の語なり。木等において切るべき位置を示すために引く線。きりづまやね/切妻屋根
隅棟のない屋根をいう。きりど/切戸
くぐりどに同じ。きりなわ/切縄
足代などに用いる普通の縄なり。きりぬきもん/切抜門
土塀、板塀、等を問わず総てそれ等を切抜きて作りたる如くに見える門。くぐりもんともいう。きりねだ/切根太
蟻掛にせず木口を切ったままの根太をいう。きりはふ/切破風
切妻屋根の破風をいう。きりめえん/切目縁
短く板を切って張ること。きりめなげし/切目長押
敷居の下の縁板との間にある長押。きりげぎょ/切懸魚
小なる破風に用いる懸魚にて図の如き形のもの。
きりこみさんがわら/切込桟瓦
普通の屋根に用いる瓦にして図の如き形のものなりきりこみひっかけさんがわら/切込引掛桟瓦
爪付きの切込桟瓦をいう。きりこむ/切込
硝子板を障子に押付けて嵌めること。きりさげなわ/切下縄
塗家において漆喰の剥脱を防ぐために所々に縄を下げかつ塗り込むものなり。きりさす/切扠首
茅葺の屋根兜桁受けの束をいう。きりのはこ/桐の箱
屋台の水引幕や彫り物などを保管しておくための箱です。写真の箱(製作途中)は、桐の小片板を張り合わせた集成材(安価)を使用しています。緑色の部分は木工用ボンドを圧着するための仮釘で、完成時には除去します。下図のように蓋を深くすることもできます。
きりまぜる/切混ぜる
コンクリートなどを作るとき砂等の材料をショベルなどにて打返しながら混ぜることをいう。きりまるた/切丸太
細端を切り除きたる丸太なり。きりめいた/切目板
切目縁の板をいう。きりめえん/切目縁
縁側の板の張りかた。縁側の長手方向に沿って縦方向に張ったものを「くれ縁」、 横方向に張ったものを「切目縁」という。板の張りかたにも上下の違いがあり、 神社や寺院の縁側はほとんどが、格式の高い切目縁が持ちいられる。→横座きりめどう/切馬道
「めどう」を見よ。きりめなげし/切目長押
敷居のしたに縁板との間にある長押をいう。きりめん/切面
「きれめん」を見よ。きりゅうし/鬼龍子
旁吻より先なる稚児棟に設けたる動物の飾り。稚児棟に設ける動物の飾り物。きりよけ/霧除
出入口の上に設ける小さな屋根のこと。きりん/麒麟
(彫刻)中国伝承の想像上の動物。鳳凰、龍、亀に並ぶ霊獣のひとつ。 鹿に似て牛尾一角。雄を麒、雌を麟という。きりん
増重い物を下より支承する、または揚起するために用いる道具にして図はその一例なり。きりをたつところなし/錐を立つ所なし
狭小なる余地なきをいう。きりをもってちをさす/錐を以って地を指す
「管の穴から天井を覗く」に同じ。きれ/切
石材の一立方尺を一切という。またこれを一さいともいう。「さい」を見よ。きれぬながたな、ひのでぬひうち/切れぬ菜刀、火の出ぬ燧
用をなさぬものの喩。きれめん/切面
普通の大面を称する人あり。きれんが/木煉瓦
煉瓦と同形につくりたる木製のものにて釘を打ち付ける為に煉瓦積中に積込むなり。きろう/機廊
「さんろう」に同じ。きろくたけはち/木六竹八
木は六月に切り、竹は八月に切るをよしとす。木七竹八塀十郎ともいう。きわかんな/際鉋
入隅などを削るための鉋。きわくみこ/際組子
欄間などの中の組子。きわねだ/際根太
壁または柱に接する根太。きわり/木割
「木割合」の省略。建物各部の木の割合をいう。きをきるきちにち/木を截る吉日
申戌 丙子 丁丑 己卯 癸未 壬辰(安部晴明ホキ内伝図解)きをきるきょうじつ/木を截る凶日
丙戌 壬戌 乙日(安部晴明ホキ内伝図解)きん/金
金による装飾は、屋台や山車では飾り金物における金メッキ、 破風などに施された金箔に用いられ、華やかな緊張感を生み出す。きんかぎょくじょう/金科玉條
金玉の科條といふ意、大切に尊奉すべき法則。きんぎんをのばしてひんのかざりしょく/金銀を延ばして貧の錺職
川柳。きんぎょ/金魚
麸(味噌汁の具や、金魚の餌の「ふ」)をいう。盗賊語。きんけつ/金穴
富豪をいう。きんたろう/金太郎
金太郎は、相模国足柄山で母の山姥と暮らす子供であったが、 熊と相撲をとり、森の動物を家来にするほど力が強かった。 これを見た源頼光の家来の碓井貞光は、金太郎を頼光の家来にスカウトした。 金太郎は頼光から坂田金時(さかたのきんとき)という名前をもらって出世し、 渡辺綱渡辺綱(わたなべのつな)、卜部季武(うらべのすえたけ)、碓井貞光(うすいのさだみつ) と共に、頼光の四天王と呼ばれるようになった。金太郎は山の神と山姥の間にできた子供として知られるが、 山姥は、大柄の老女で髪が長く口が裂けている姿であることが多く、 多産で人間の子供を好んで食べる性質を持つ。しかし、豊穣をもたらすシンボルでもある。 ウキペディアで金太郎と山姥を検索すると、いずれも金太郎を抱いた山姥の絵を 見ることができる。どちらの山姥も口が裂けた老婆の容姿ではなかったが「おはぐろ」をしていた。 たまたま今日のNHKテレビ「生中継 ふるさと一番!「900年の歴史!南部鉄器 名工の技〜岩手県奥州市〜」 で、「おはぐろ液」を鉄器の焼き付け塗装に利用している場面が写り、その職人さんが 「おはぐろ液」の作り方について説明していたのでメモしておく。おはぐろ(黒い液体)とは、 濃く煮出したお茶(緑色の液体)と、酢に鉄錆(おそらく鉄片を焼いて錆させたもの)を入れて三年寝かした 茶褐色の液体を、焼き付け塗装するときに、必要な分量だけ別の容器に移して混合させた液体のことらしい。
屋台彫刻の題材として 浜松市屋台御簾脇の金太郎彫刻姿図
なぜ、頼光の四天王が有名かというと、 坂田金時(坂田公時 さかたきみとき)はじめとする「頼光四天王」と源頼光は、 日本三大悪妖怪の一人である酒呑童子(しゅてんどうじ==最強の鬼)を退治したからである。