ABC

ぬいくぎ/縫釘

木の継手の所に打って両方を繋ぎ合わせるための釘。

ぬえたいじ/鵺退治



源三位(げんざんみ)頼政が宮殿の屋根にいる怪鳥を弓で射殺したという伝説。

仁平年間の頃、毎晩真夜中になると東三條の森のほうから ムラムラと湧き出した一叢(ひとむら)の黒雲が近衛天皇の御所の 屋根に蔽いかぶさるようになり、天子は病気になってしまった。

坊さんたちがいくら悪魔退散の祈祷をしても天子の様態は悪くなるばかり。 そこで、弓の名人である源頼政が夜通し御門を守り、悪魔妖怪を 討ち取り、天子の苦しみを取り除くことになった。

頼政は大勢の家来の中から遠江国の猪早太を呼び寄せて言った。 『早太! 一大事である、今夜御所の怪物を射止める御用を 承ったに就いて、特別に其方を伴に連れるぞ、これは 骨食(ほねぐい)の短刀である。其方に授ける程に、天晴れ功名手柄を立てよ』 早太はうれし涙に掻きくれた。そしてその日暮近く、二人は御所の 門前へと駆けつけた。

頼政は二重の狩衣を着用し、山鳥の尾の鏑矢と、とがり矢を持参した。 二種の矢を用意したのには訳があった。もし、最初の一矢で怪物を 射止められなかった場合、頼政は第二の矢を以って、自分を推薦 して呉れた源雅頼の首ッ玉を射抜いたうえ、自分も自殺するつもりだからだ。 怪物退治は、それほど重大な御用だった。

真夜中、一塊の黒雲がぐんぐん大きくなり、晴れた夜空の星を隠した。 それは舞い下がり、御所の屋根いっぱいに覆い被さった。 『さては怪しい雲の姿だ』頼政は、心静かに山鳥の尾の鏑矢を番い、 狙いを定めて、『南無八幡大菩薩!』と念じ上げて、ヒュツ!と放った。 其矢には、確かに手答えがあった。キャツ!と一声、血に染まった怪物が、 屋根の上からコロコロと地面に転がり落ちた。

待ち設けていたのは猪早太。懐中から、骨食いの短刀を取り出し、 グサグサと続けざまに、怪物の喉元を突き刺し、息の根を止めたのだ。

庭の騒々しさに皆が集まってきた。おそるおそる怪物の死骸に手燭を 差し向けて見ると、頭は猿、胴は狸、尾は蛇、手足は虎、其の鳴き声は 鵺のようで、至極念の入った怪物であった。さっそく、この旨を 天子に申し上げると、殊のほか喜び、恩賞として「獅子王」という剣を 頼政に下された。

そのとき、ほととぎすが二声三声鳴いて御所の屋根を飛びすぎていった。 頼政は『ほととぎす、名をば雲井にあぐるかな』と歌の上の句を詠じ、 月を見上げながら『弓張月の射るにまかせて』と下の句を詠じて退出したという。

出典は、国立国会図書館 近代デジタルライブラリー、 「唐糸草紙」 巌谷小波著他,文武堂, 大正15. - (模範童話文庫 ; 3)。 国立国会図書館のデジタル化資料の中には「新形三十六怪撰 内裏に猪早太鵺を刺図」 があるという。IE6は対応していないらしく、その鵺の図は見てないのだが、 文脈からは怪鳥らしからぬ怪獣の姿しか想像できない。

なお、鵺の死体が浜名湖西方に落ちてきたという異説もあるそうで、 遠江国の猪早太のこともあって親近感が湧く。ちなみに、 浜松市北区三ヶ日町鵺代などの地名は、このとき鵺の死体が 空から落ちてきたことに由来するという。

ぬかにくぎ/糠に釘

「豆腐に鎹」「土に灸」などというに同じ。

ぬき/貫

柱を繋ぎ合わす横木。柱を挿し通して横につなぐ構造材。大仏様、禅宗様とともに日本に伝えられた。構造的に優れ、長押だけの和様建築に広く普及した。

ぬきあな/貫孔

貫を貫通する為に柱などにあける孔。

ぬきうちど/貫打戸

仮木戸門などの扉にして貫を打って作りたるもの。

ぬすびともとじまり/盗人も戸締

「盗人も我が家の用心」に同じ。

ぬぐいいた/拭板

平滑な床板。

ぬけぶし/抜節

脱去したる若しくは脱去せんとする節。

ぬづちのかみ/ぬづちの神

萱野姫。

ぬの/布

布丸太、布竹等を略して布ともいう。

ぬのいたばり/布板張

廊下、縁側、などの床板を長手に張る場合にいう。

ぬのいし/布石

敷石を長手に据付けた場合にそれを布石敷といい、その石を布石という。土台下に長く据付けられた石をいう。

ぬのいし/布石

土台の下に土台と平行に敷く石。→布基礎コンクリート

ぬのうらごう/布裏甲

長手に取付けたる裏甲。対して短き木を並べて木口を現出するものを「木口裏甲」と称す。ちごむね。

ぬのさらし/布晒し

左は小池佐太郎の毛筆画習作。 手本にしたと思われる絵は
国立国会図書館デジタルコレクション『萬物雛形画譜』 の 5 に収載されています。


ぬのだけ/布竹

菱竹矢來などの横竹。

ぬのはめ/布羽目

横に板を張った羽目。

ぬのぶせ/布伏

木材面に漆喰塗り又は漆塗りするとき又は散漆喰を行うときなどにおいて下地に布を付着すること。

ぬのほり/布堀

丁堀に同じ。

ぬのまるた/布丸太

足代の建地又は仮板囲いの柱等を連結する横の丸太。

ぬのめかわら/布文瓦

昔のかわらには裏面に布文がある。

ぬまいり/沼入

杭などの水底より下に入り込める部分をいう。

ぬまづがき/沼津垣

あじろがき。

ぬめ/滑

敷居鴨居の溝のないもの。

ぬめ

建仁寺垣等で立子が直接地表に当たると腐りやすいことから、柱の下部に水平に(大貫などの)幅の狭い板片を 固定して立子の裾を受けると、水分が少なくて立子の裾が腐りにくい。その水平に固定した(立子の裾の下の)板片のこと。

ぬれえん/濡縁

雨戸の外にある縁のこと。

ぬれぎぬ/濡衣

〜名にしおはば仇にぞあるべきたはれ島浪の濡衣きるというなり。〜[伊勢物語]

ぬりぼんへのせたひきがえる/塗盆に載せた蝦蟇

よく滑る喩。

ぬりがまち/塗框

漆喰塗りの床框。

ぬりこみぬき/塗込貫

小舞竹を取付けるための貫。

ぬりこめ/塗籠

壁を塗り廻し妻戸を立て調度を置く所

ぬりしたじ/塗下地

漆喰塗りの下地。すなわち木摺り。

ぬりしたづみ/塗下済

漆喰塗下の煉瓦積み。

ぬりしろ/塗代

漆喰塗りの部分をいう。

ぬりや/塗家

土蔵造りの家をいう。また漆喰塗りの建物もいう。

ぬりまわしどこ/塗廻し床

床内部の柱やその他の木部を壁土にて塗隠した床の間。

ぬれえん/濡縁

外方に雨戸がない縁側。すなわち雨ざらしなもの。
千葉県印旛郡付近では「小さな玄関」という意味を持つ「さもと」と称し、盆の日には、 ここに足洗いの水を張った盥を置き、祖先人を迎え入れて足を洗うという。


ページの先頭に戻る
ホームページに戻る