ヴィーデマン−フランツの法則/ Wiedemann-Franz law
建築には直接関係ないです…。熱の伝導率は大きいほうから、ダイヤモンド>銀>銅>金>アルミニウム>… という 順番になっていて、それはそのまま電気の伝導率と同一の値をもつ。 ただし、金属に限った法則なのでダイヤモンドは除外。つまり、熱を通しやすい金属は、電気も通しやすいということをメモしておきたかった。Gustav Heinrich Wiedemann(1826-1899)
うえそ/植苧
漆喰の脱落を予防するために木摺に釘を打ちその頭に苧を付け漆喰を塗りこむもの。うえきやのにわ/植木屋の庭
木がたくさんある → 気が多いという謎。うおにくとりかわ/魚肉鳥皮
魚を焼くときは肉のほうから、鳥を焼くときは皮のほうから焼くべし。うきいた/浮板
唐戸または腰羽目などの入子板の浮き上がる部分を人により「浮板」と称す。うきすけ/浮助
元禄年間江戸の語で、風流男をいう。うけぎ/請木
総て物を受けるための木を言う。「軒蛇腹請木」など。うけざ/請座
請座金物の略称。うけざかなもの/請座金物
軸穴周りの金物。うけつぼ/請壺
一端に穴を有する金物。それに掛金を嵌めて釘などを串で締りをなす。うけはな/請花
九輪下などに設けることのある上向きの花形。八葉の群集するものが多い。うけばな/請鼻
枡組を受ける木鼻をいう。うけばす・うけはす/受蓮
唐様須弥壇の架木を受ける受枡。(欠損品を複製したもの)うけます/受枡
高欄の斗束(とづか)の上にあって架木(ほこぎ)を受ける斗(ます)。跳高欄の受桝を(斗繰りを鑿で)加工しているところです。 (架木を受けるために桝束の上に取り付く部材です)
うぐいすがき/鶯垣
「しばがき」に同じ。うざいがき/有財餓鬼
守銭奴のこと。うさぎ/兎
(彫刻)神話の「因幡の白兎」が有名。図柄はほとんどが波と組み合わされている。 「波乗り兎」うし/牛
(彫刻)農耕や車の牽引に使役され民間の祭礼では田植え神事に登場する。天満宮では 神使とされ、青銅製の寝牛を「なで牛」と称して縁起のよいものとされ、境内に 置かれることが多い。日本ではあらゆる異文化が吸収され土壌に根づいていったが、 受け入れられなかった食文化もある。その代表が牛乳だという。8世紀初頭編の「大宝 律令」には「蘇」と呼ばれる薬用乳製品の記述があるそうだが、10世紀半ば頃からは牛乳の利用に関する資料は減り、飲用の習慣も衰退していったらしい。その背景は、家畜を 食用にする習慣がなかったこと、汚らわしい見做す生理的な抵抗感、仏教の宗教的タブー、あるいは、日本人は黄色人種の中で牛乳に含まれる乳糖への耐性が特に低いため下痢を起こしやすい体質という事情もあるという。十二支における「丑」の忌日では、故郷に還ると兄弟を失うことになる日があるという。うしかってうまをかう/牛買って馬を買う
優れたる方に取り掛かる喩え。うじ/氏
氏とは家々の系統に随って、一族子孫が伝えて称する号のこと。 たとえば大伴、物部、蘇我などが上古からある。別に朝廷から賜われたものとして源、平、 藤、橘などもある。これらの子孫が増えるに従って北条、足利、織田、徳川、その他、 地名を採り構えたものもできた。うじがみ/氏神
もともとの氏神は、氏などの子孫の者が、氏であったそれぞれの先祖を祭ったものである。 たとえば藤原氏は其祖の天児屋根命(あめのこやねのみこと)を春日大社の主祭神とし、 氏族を守護する神即氏神として祀るに至る。しかし、ひとつの村に異なる氏神を祀る氏子が住んでいた場合、それらの氏子相互の間には 一種の敵視態度が醸成されるに至る。それは国家の発展、報本反始(祖先の恩に報いること) の趣旨に反することであり望ましくないことだから、一村一社のきまりを作り、既存の 神社は併合して形式内容を充実することによって祭祀を厚くする方法を採ることにした。 上記の過程により今日(1932年頃)に至っては、氏神は人の生まれたる土地を守護する 神即産土神として祀られる神のことをいう。
うじがみまつり/氏神祭り
児が生まれれば百日目には産土神祭りと称して神祭りを行い将来の幸福を祈る。 村に悪疫が流行すれば祈る。旱天(日照り)打ち続けば雨乞いをする。 豊かに実れば賑々しく神を祭る。氏神祭りの根本精神は国民性の特質たる祖先崇拝に外ならず、民心を支配する という長所を持っている。その神社は村の中心であり郷土の中心である。 而して人の信仰の中心である。郷土人はこの神社によって統一され、協同され、相助されてゆく。
うじこ/氏子
産土神の擁護を受ける地に生まれたる民を称する。うしおいにしぐれ/牛追に時雨
似合はしき景物の取り合わせをいう。「紅葉に鹿」の類。うしこんじょう/牛根性
沈黙して強情なること。うしと/牛斗(丑斗)
隅斗、鬼斗のこと。うしとらのとしのうまれのひとはうなぎをくうべからず/丑寅の年の生まれの人は鰻を食うべからず
世俗に丑寅の年の生まれの人は一代の守本尊虚空菩薩にて生涯鰻を食うことを禁ずと言われていたが、 「丑の日に鰻を食うと薬になる」という俗説もあった。 他に、徳川地代には丑年生まれの庶子は惣領に祟ると言われていたので、庶子を僧にした習慣があった。うしばり/牛梁
主に重いものを受ける梁。土蔵の地棟も亦牛梁。牛曳きとも牛曳梁ともいう。うしびき/牛曳
牛梁に同じ。うしびきばり/牛曳梁
牛梁に同じ。うしひじき/牛肘木
隅肘木をいう。うしのしょうべんじゅうはちちょう/牛の小便十八町
牛の小便は半里を往く間にわたる…という諺。うしのした/牛の舌
[くつぞこ]という名の魚。江戸にて舌ひらめと呼ぶ。うしのしり/牛の尻
物識(ものしり)という謎。うしのふん/牛の糞
外剛きが如くも、内柔にして、女に油断ならぬ人という意。うしのつのにはちがさす/牛の角に蜂が刺す
いささかも感じないこと。馬の耳に念仏と同じ。うしはうしづれうまはうまづれ/牛は牛づれ馬は馬づれ
「類は友を呼ぶ」のような意味。(韓詩外伝)うしろど/後戸
仏堂の内陣の後方、須弥壇の背面側の空間。うしろながれ/後流
棟より後方の屋根部をいう。うす/臼
舵取り装置がついた前輪の「臼」と呼ばれる回転する部分。うすのもの/臼の者
米春(こめつき)男をいう。うず/渦
渦巻に同じ。渦は若葉などと共に用いることが多い。うずいた/渦板
渦を彫刻した柱にして蟇股の様に他物を支えるもの。うずがた/渦形
「うずまき」に同じ。うすかもい/薄鴨居
普通の鴨居より薄いもので欄間などの上にありその厚さは普通の鴨居の八割ほど。うすぐものず/薄雲ノ図
左は小池佐太郎の毛筆画習作。 手本にしたと思われる絵は 国立国会図書館デジタルコレクション『萬物雛形画譜』 の 3 に収載されています。うずげぎょ/渦懸魚
渦形付の鰭を有する懸魚。うずまき/渦巻
幾重にも巻きたる形の模様をいう。うずみもん/埋門
石垣中の穴に扉を設けたるもので孤立して造りたるものではない。うずらもく/鶉杢
屋久杉などの如く捩れ多い木に往々見る所の木理にして特種な美麗なる板目。うずわかば/渦若葉
若葉の端の巻きたる形の模様をいう。うすしきい/薄敷居
欄間下などにある薄い敷居。うたせがえし
打返しに同じ。うすそこ/臼當
ほぞ周り面らをいう。「胴付」に同じ。うたち
「うだつ」ともいう。束に同じ。うたいざ/謠座
能舞台において地謠の座する所をいう。うつばり/梁
「はり」に同じ。うづばしら/うづ柱
珍柱と書くべきか。大社造りの外側の中心柱をいう。「おおやしろづくり」を見よ。うつぼ/靭
「うつぼ」瓦の略称。うつぼがわら/靭瓦
谷又は大なる本瓦葺に用いる瓦。一部凵の字形をなす。うつぼばしら/空柱
方柱形の箱の竪樋。うちかけかなもの/打掛金物
とびらを締りするために設けた金物。うちこうりょう/内虹梁
内室虹梁等総て内側にある虹梁。うちこし/打越
ある点を越えて測る長さを打越何尺という。うちこしたるき/打越垂木
本家より向拝柱の上方に架した垂木。うちこもの/打小物
「こししょうじ」をみよ。うちこみいし/打込石
「蹴込石」ともいう。うちだし/打出
ほぞの端を他の木のほぞ穴を貫いて出すことをいう。また規矩法においてほぞの貫きでたるところをもいう。うちつけほぞ/打付ほぞ
指物職の語。二枚の板を直角に組む仕方の一つにして突付にした上単に木釘にて打ちたるもの。うちむろ/内室
屋根裏における内方をいう。例えば薬医門の内室虹梁は両妻虹梁の間にあるもの。うちむろこうりょう/内室虹梁
「うちむろ」。うちむろづくり/内室造
天井なき造り方。うちとい/内樋
軒欄干又は軒壁の後に隠したる樋をいう。うちぬき/打貫
鉄板などに孔を鏨にて打ち開けることをいう。うちぬきたがね/打貫鏨
鉄板などに孔をあけて穿ために用いる鏨。うちのり/内法
上下の間のこと。柱間、窓、出入口などの内側の距離のこと。うちのりなげし/内法長押
窓や出入口のすぐ上に通る長押で、柱に釘どめされる。うちのりぬき/内法貫
鴨居のすぐ上の貫。内法長押で隠されることが多い。うちはし/打橋
切馬道の上又は建物の間に渡廊下なき所に通行のため渡したる板をいう。俗に「渡板」又は「投渡板」と称すもの。うちほぞ/打ほぞ
付鴨居を柱に取付けたときの仕口にして横平たいほぞにて留めに仕込むなり。うちほぞとめ/打ほぞ留
図の如く上下を留めに見せ間にほぞを設けたもの。うちわけ/内譯
工事用の材料若干、手間何人と明細に記載したもの。うつ/打つ
「釘を打つ」「水を打つ」「石を打つ」「碁を打つ」 釘を打つには、釘を強く叩くという意味があるが、他には加減して軽くという意味がある。 ちなみに将棋はさすいう言い方をする。うつぼぐさ/うつぼ草
葱の異名。葉の中空なるよりいふならん。うでぎ/腕木
一端は柱若しくはほかのものに付着して他端は持放しの横木。庇霧除等の腕木。うでぎびさし/腕木庇
腕木を有する庇。うでぎもん/腕木門
木戸門に同じ。うでげた/腕桁
出桁に同じ。うど
静岡県の方言で波打ち際のこと。うどのたいぼくはしらにならぬ/独活の大木柱にならぬ
容貌のみ壮偉にして何の長所もない者のこと、または体ばかり大きくて虚弱なるもののの如くをいう。うどのたいぼくはすぼくとう/濁活の大木蓮木刀
無用の長物、役にたたないひと。うどん/饂飩
江戸時代に作られた虹梁の若葉(植物柄の彫刻のこと)を「いわゆる饂飩式の唐草」などと 言います。虹梁の装飾的要素は室町時代の末頃に始まり、桃山時代には盛んに若葉が彫 られるようになり、江戸時代にはさらに賑やかな「饂飩式」の装飾となります。 小麦粉が日本に入ってきたのは2300年前、そばは2500年前の化石が唐津市で発見されていますので栽培は古いのですが、そばとして食されたのは最も遅かったそうです。 誕生の順序は、仏教の伝来と共に入ってきたソウメン(索餅(ムギワナ)→サクベイ→江戸時代にソウメンになる)食べかたの工夫から→冷麦、蒸麦、入麺、熱麦→うどん=きしめん→そば。奈良時代に唐から伝わったという熱くてコロコロした菓子の「飩(こんとん)」に由来するという説明もあります。うなぎににぐら/鰻に荷鞍
瓢箪鯰と同意。うのはなづき/卯の花月
陰暦四月の異名。うのげとおし/兎毛通
唐破風の懸魚をいう。うま/馬
受け台のこと。うま/馬
彫刻で組み合わされる植物は松や牡丹、桜の場合もあります。 街道筋に建てられた馬頭観音は厳しい労働のために生き倒れになった 馬を弔うものです。馬は酷使される一方、神の乗り物と考えられたため 女房が産気付くと夫が馬を引いて安産の神である山の神を迎えに行ったそうです。うまぎ/馬木
根元の曲がった形状の樹木(奈良県吉野郡の方言)うまじるし/馬印
記旗のこと。将師が軍に臨めるとき、馬側に建ててその居場所を示した標。 豊臣氏の馬印は千瓢。うまのかね/馬印
馬の琵琶殿(馬の後足の琵琶に似た形の個所(又ひら))の外に押した焼金の印。うまのしょうべん/馬の小便
茶の稀薄なるに喩え。うぶすな/産土
集落の土着神を共同で祀ったもの。氏神。鎮守様。 建物を建てるときに行う地鎮祭(じちんさい・トコシズメノマツリ)は鎮守様の仕事とされる。うみ/海
蹲(つくばい)の中央凹部のこと。うみやま/海山
量多きこと。 〜海山かたじけない。〜 海山うれしい。 〜うめ/梅
「東風吹かば匂ひおこせよ梅の花あるじなしとて春を忘るな」菅原道真の飛梅伝説。 「松竹梅」における梅は佳人、美しい人に譬えられ、寒気に耐え早春に花を咲かせる ことから、花の中の君子ともいう。ちなみに松は不老長寿。竹は節を保つことから 志操賢貞を寓意し、中国語の竹(竺)と祝が同音であることから「祝」を意味。うめかし/埋樫
敷居の溝底に差入れてある赤樫の板。「溝樫」または「辷木」ともいう。うめかせぬき/埋械貫
「ねがらみぬき」うめき/埋木
木にある穴を塞ぐために用いる木をいう。うめきのみ/埋木鑿
「しのぎのみ」に同じ。うめぐさ/埋草
場所を塞ぐ材料。うめつづき/梅津月
陰暦二月の異名。うめつさづき/梅つさ月
陰暦二月の異名。うめみづき/梅見月
陰暦二月の異名。うめどい/埋樋
地中に埋め込まれる土管または木樋。うめどだい/埋土台
井戸の化粧側下に据えある土台をいう。うめにうぐいす、もみじにしか、ぼたんにからじし、たけにとら/梅に鶯、紅葉に鹿、ボタンに唐獅子、竹に虎
絵の取り合わせ。うめにうぐいす、やなぎにつばめ/梅に鶯、柳に燕
絵の取り合わせ。うめはつづき/梅初月
陰暦十二月の異名。うめねだ/埋根太
地上に直接に置いてある根太をいう。うめばちげぎょ/梅鉢懸魚
外形五角になる懸魚。うめばり/埋梁
木橋などで地中に埋めてある梁。うゆう/烏有
肘木が尾垂木に接触し消滅するところうら/裏
表に対しての反対側。木表、木裏。うら/梢
樹木の梢端、その年に生じた部分。土佐では「うれ」という。うらいた/裏板
物の後になる板。物の背後にあって、その明きをふさぐ板。たとえば木連格子の裏板とは、木連格子の裏にあって、 その隙間をふさぐ板。支輪裏板は、支輪の後にあって支輪間をふさぐ板。うらがえしぬり/裏返塗
小舞に荒木田土を塗り其乾く先に小舞を隔てて他の側へも土を塗ること。うらかべ/裏壁
「うらがえしぬり」を見よ。うらがね/裏矩
指金の裏目のこと。うらがね/裏曲
曲金の裏目のこと。裏矩に同じ。 「ますのつるがね」とも云う。うらごう/裏甲
軒先において茅負の上にある化粧の板。 茅負上に取り付ける化粧材。長手に使う場合のを布裏甲、木口(こぐち)を正面に使う場合を木口裏甲という。→(かやおい/茅負)うらごめ/裏込
石垣の築石の背後に割栗及び砂利を築立つもの。 emplection 石積みの倒壊を防ぎ、排水を良好にして土圧を軽減する工法。裏詰(うらつめ)、飼詰(かいつめ)ともいう。うらざん/裏桟
天井板などの裏に取り付ける桟。うらしまこ ほうらいさんのず/浦島子 蓬莱山ノ図
左は小池佐太郎の毛筆画習作。 手本にしたと思われる絵は 国立国会図書館デジタルコレクション『萬物雛形画譜』 の 1 に収載されています。うらじろど/裏白戸
略して「裏白」ともいう。土蔵の入口にある戸にして表側は漆喰塗りなるもの。うらなりのひょうたん/未生の瓢箪
顔面蒼白にして虚弱なる人をいう。うらづみ/裏積
煉瓦壁の裏面に用いる煉瓦をいう。裏積煉瓦の略語。うるし/漆
東北諸国の寒地に適する。質は堅軟の中間にあり、黄色の中等材で、粧飾材、寄木、嵌木、魚網の浮木などに 用いられるが、その用途の主とするところは木皮から漆汁を搾ることにある。 漆には雌雄があり、雄木は開花するが種を付けない。雌雄ともに漆液を掻き取ることができる。 掻取りの時期は半夏に始め霜降りに至るまでである。 潤葉落葉の喬木で、葉の紅葉する頃が美しい。うるし/漆
Japan Lacquer。漆の木から掻きとられる樹液。 ウルシの樹幹に傷をつけるとしみ出てくる乳白色の液。主成分はウルシオール。 攪拌加熱の段階で酸化鉄を混ぜると黒漆になる。漆は湿度を保った漆室(漆風呂)で硬化させる。漆膜は光沢があり、 水、アルカリ、酸に対して強い性質を持つ。紫外線には弱く、太陽光に長時間さらすと 光沢が失われ亀裂が生じる。木地の吸湿脱湿により変形すると漆膜に損傷が生じる。 漆膜の破壊ひずみは3%〜6.5%であり、ケヤキよりも密度の低いヒノキのほうが伸縮量は少ない。 漆器の起源は8000年前の中国浙江省にはじまるという説と、7000年前の縄文時代に 赤漆と黒漆を使いこなし文様を描いていたことから、日本独自のものであるという説がある。 漆塗りの屋台高欄に子供たちが触れても大丈夫かというお問合せがありましたが、 完全に乾燥している漆であればかぶれる心配はないそうです。代用ウルシとしてカシューがあります。
うるしぬり/漆塗り
左の写真は屋台に施された漆の破片です (プラモデルを組み立てるときに生じるバリのようなもの)。厚さは1ミリ強、鏡面光沢を放つ漆は (おおむね)下記のような(塗師屋の)作業工程を経て作られています。@先ず木地に傷があれば修復をします。
A @に漆と米糊を練った材料で綿製の「青キセ布」(写真)を貼ります。(砥粉と膠を混ぜたもので麻布を貼るという方法もあるらしいです)
B Aが乾燥したら生漆と米粉と地の粉を水で練ったものを塗ります。
C Bに生漆と砥の粉を水で練ったものを2回塗ります(錆び付け)。 (ABC下地の工程には、天然漆の代わりにサーフェイサーを使用する場合もあるそうです)
D Cを砥石にて水研ぎします。
E Dを一ヶ月間養生します。
F Eを砥石で水研ぎして平らに仕上げます。
G Fにペーパー(布)を当てて更に平滑にします。
H Gに1回目の漆塗りをします。
I Hを室(漆が乾きやすい湿度を保った部屋)で乾燥(硬化)させます。
J Iを炭(スルガ炭)で墨研ぎをします(おそらく光沢を出すため)。
K Jを布で拭きあげます(同じく)。
L Kに2回目の漆塗りをします(1日1面しかできません)。
M Lを室(漆が乾きやすい湿度を保った部屋)で乾燥(硬化)させます。
N Mを炭(スルガ炭)で墨研ぎをします(おそらく光沢を出すため)。
O Nを布で拭きあげます(同じく)。
P 蝋色加工をする場合はOを30日間養生します。
Q Pに蝋色加工を施します(不純物のない漆を塗って乾燥させて磨き上げること)。
白木の屋台に漆を施すために(大工は)下記の作業を行っています。
@屋台を解体して作業場に持ち帰ります。
A組子や高欄その他の組み合わせた部材を最小単位まで分解します。
B仕口などの接合部分を漆の厚さ分だけ小さくします。
C塗師屋さんに届けます。
Dお世話になっている塗師屋さん⇒ 千代田屋さん
漆が塗りあがったら引き取りに行きます。
Eヤスリなどで漆の擦り合わせをします。
F仮組みをします。そしてバラします。
G屋台格納庫に運搬して組み立てます
縁板と縁葛は螺鈿(らでん)を施工
作業
屋台に漆を施すためには、漆を塗る前に接合部を漆の厚さ分だけ削り取る作業と、漆を塗った後にヤスリで余計な漆を削り取って、実際に組み合わせる作業を行います。
うるしのやきつけとそう/漆の焼き付け塗装
名古屋の由緒ある山車には、幕受けなどの部材、見える個所にも鉄(クロガネ)が用いられ、(おそらく)黒錆となった鉄の表面が地金を保護しています。 一般に流通している鉄材は最初から防錆効果のある被覆が施されています。 サンドペーパーで鉄片の被覆を一部除去するなどしてから下記の実験を行いました。鉄片をガスバーナーで焼き、千代田屋さんに分けていただいた生漆を刷毛で塗りました。じゅわんと煙が出て、簡単に 漆の焼き付け塗装が出来ました。しっかり刷毛の跡が残ってしまいましたが、渋くて古風な感じがしないということもありません。
タンニン(柿渋などに含まれる成分)の化学反応を利用した錆固定剤も試しました。そもそも鉄片が錆びていないので、希望するような 変化は生じませんでした。「染めQ」(詳しくは検索してください) による塗装は、さすがに綺麗に仕上がりました(ついでにライターも塗装)。 ただ、鉄片の角で表面を叩くと容易に傷が付き、塗装が綺麗なだけに目立ってしまうのが難点でしょうか。
乾燥炉は持っていませんので、羽釜に漆を焼き付ける方法をイメージして実験しました。以下は《見習工教科書》より。 〜 漆液を塗ったものを100℃以上の高温の中に入れておくと速やかに乾燥することは、 漆液の性質のところで述べましたが、これを漆の焼き付けと言います。この方法によると漆は堅い皮膜となって 品物に密着し、耐久力大きく出来栄えもよいし、乾燥時間が非常に短くて済むので、小さな金物等に対して 広く行われています。三等客車室内の金具に対しては、漆の焼き付け塗りを施すことになっています。
漆の焼き付けは普通の方法によって漆を塗り、乾燥炉に入れて乾燥させます。 乾燥炉は電気、蒸気又は瓦斯等によって高温度を保たせるように設備したもので、この中に棚を設けてこれに 塗った物を載せて乾燥させるようにしたものです。
漆の焼き付けに適する温度は100〜150度位で、それよりも高温度では漆が変色する恐れがあります。 乾燥時間は1時間乃至2時間位です。〜