けあげ/蹴上
階段の一段の高さをいう。けいがいをどぼくにす/形骸を土木にす
外貌を飾らざること。げいはみをたすけぬ かごのうずら/藝は身を助けぬ籠の鶉
鵜は芸があるがために籠中に苦しむ、芸は必ずしも身を助けるものあらずとの意。げぎょ/懸魚
破風の拝下に垂れ降ろした飾りものをいう。屋根の妻部に置いて破風に取り付け、棟や桁の木口をふさぎ、 その腐蝕を防ぐための部材。その形によって猪目懸魚、蕪懸魚、梅鉢懸魚などの類型がある。社殿向拝部の唐破風にも懸魚がつき、兎毛通しと呼ばれる。懸魚は法隆寺金堂の拝み部分の破風飾金具が祖型らしい。日本では鎌倉の時代よりも古いものはないともいう。妻破風の頂に垂れ下げて付ける飾り。 元来は装飾以外の目的を持っていました。 この能楽堂には、社寺でみかける「猪ノ目懸魚」が取り付けられている。 懸魚の下にある蛙が股を広げたような部材は「蟇股(かえるまた)」
懸魚とは破風板の拝みについている飾りのことで、古くは「けんぎょ」とも訓まれたそうです。写真の懸魚、屋根の切妻において破風の頂点、棟木を隠す位置についているので、拝み懸魚(おがみげぎょ)といいます。写真にはありませんが、破風の流れの中間にある母屋や桁の先端に付ける懸魚を脇懸魚(わきげぎょ)降り懸魚(くだりげぎょ) といいます。懸魚の形状により名称は、猪の目懸魚・唐破風懸魚・梅鉢懸魚・蕪(かぶら)懸魚などと多岐に渡り、時代判定の手がかりにもされているそうです。 懸魚上部の中央、六枚の花弁からなる菊座を六葉座といい、六葉から突き出している栓のようなものを樽の口といいます。懸魚の左右に付いているものは鰭(ひれ)といいます。 懸魚には棟木や桁を風雨に曝さないという機能のほかに、水と縁がある魚や樽の口によって建物を火災から守るという呪い(まじない)の意味があるようです。
けこみ/蹴込
床板または階段の垂直な板のこと。けこみいし/蹴込石
土台下において猫石間の隙を充たすために後ろより差込たる石をいう。これを「打込石」ともいう。けこみいた/蹴込板
段等の垂直部の板。けこみとこ/蹴込床
床框なくして唯床板と寄との間に蹴込板を有するもの。図を見よ。げこのたてたるくらはなけれど、ごけのたてたるいえおおし/下戸の建てたる蔵はなけれど、後家の建てたる 家多し
「下戸の建てたる蔵は無く、御神酒あがらぬ神はなし」「下戸の建てたる蔵は無もなし」 酒を飲まねばとて、富者ともならずの意。けさがた/袈裟形
梵鐘の縦横の筋。けしょう/化粧
粗木に対して鉋削りしたる、若しくは構造的に対して、装飾的な、等の意味を表すための形容詞なり。げしょう/牙象
机や台についている脚の特殊な形のもの。=猫足(ねこあし)。けしょういた/化粧板
野板に対して鉋削りした板。けしょううらいた/化粧裏板
軒下に現れる裏板にして化粧垂木の上にありまたは、化粧小舞を隔てて化粧垂木の上にあり。野裏板に対する。けしょうがわ/化粧側
井戸側の地上に現れるもの。けしょうこうばい/化粧勾配
化粧垂木の勾配をいう。けしょうこまい/化粧小舞
軒下に現れる小舞をいう。竹を交え用いることあり。けしょうじだるき/化粧地垂木
化粧垂木の中丸桁に乗りえるものなり。けしょうだるき/化粧垂木
軒下に現れる垂木をいう。野垂木と区別するための語。けしょうだるき/化粧垂木
軒先を特に現した垂木のこと。けしょうつか/化粧束
「さすづか」に同じ。けしょうづみ/化粧積
煉瓦積において表面に現れる煉瓦をいう。裏積み及び中伏せに対する語。けしょうなげし/化粧長押
天井廻縁より少し下にある長押。すなわち蟻壁長押に同じ。けしょうのき/化粧軒
軒下の現れるものをいう。板又は漆喰等にて隠した軒に対する。けしょうのま/化粧の間
化粧部屋ともいう。化粧をする所なり。けしょうびょう/化粧鋲
模様などのほどこしてある鋲をいう。けしょうむね/化粧棟
けしょうめじ/化粧目地
洗出積なる煉瓦積みにおいては目地を後に丁寧に?充填するものとする。これを化粧目地という。平目地、覆輪目地ともいう。けしょうやねうら/化粧屋根裏
天井なくして小屋組みの現れるのを「屋根裏」という。その各材を鉋削りにした場合を化粧屋根裏という。げじん/外陣
礼堂とも呼び、礼拝の空間。→ないじんげすおけ/下須桶
仮雪隠の汚物溜りの桶をいう。げすがめ/下須瓶
雪隠の瓶をいう。けすさ/毛つた
「けつた」に同じ。げすのいっすん、のろまのさんずん、ばかのあけはなし/下衆の一寸、鈍間の三寸、馬鹿の明放し
戸を閉じるに一寸ほど残すもの、三寸ほどなるもの、全く明け放しなるものあり、 之によりて人物の如何を卜すべし。けずりごや/削小屋
鉋削りしたる木にて造りたる小屋組。げそく/花足
猫足、鷺足、などの花形模様付のもの。けた/桁
側柱上にあって屋根の垂木を受ける横架材のこと。深い軒を支える出桁は、古くは丸かったので丸桁(がぎょう)と呼ばれている。けたかくし/桁隠
切妻屋根において母屋桁の端を隠すために取付けた化粧板をいう。又之を「桁エブリ板」とも称す。懸魚の形をなすものは降懸魚、脇懸魚、桁隠懸魚などの名称あり。されど降懸魚などは桁の端のあらざる位置にも化粧的に用いることあり。げたなおしもしょくにんのうち/下駄直しも職人のうち
「蝙蝠も鳥のうち」の類。げたもほとけもおなじきのきれ/下駄も佛も同じ木の端
「下駄も阿弥陀も」に同じ。貴賎の別あるも、もと同根なりとの意。けたゆき/桁行
小屋梁に直角な方向をいう。棟と同じ方向の桁の長さのこと。けたゆきよんけん、りょうかんさんけん/桁行四間、梁間三間
柱の間が正面から見ると四つ、側面から見ると三つに区切られていること。 法隆寺の中門は偶数の柱間を持ち、門の中央に太い柱が立つ唯一の門。けづた/毛づた
南京つたに同じ。けはなし/蹴放
取外すことを得るシキミ閾をいう。けびき/罫引
木材面に線をつけるための道具なり。定規台に竿を差しその端のほうに罫引刃をとりつけてあるものにて筋罫引及び割罫引の二種あり。けぼり/毛彫
彫刻の一種にして極細く彫ること又は彫ったもの。げや/下屋
本屋よりも葺降した屋根のこと。けやき/欅
温暖高燥の地によく育つ。昔から日向のものを上等としているが、今(但し、出典の資料は、明治39年の 今 影彦「木の研究」なので、今と言ってもかなり昔の話です)は、産額大に減じ、東京市中に来るもの多くは 磐城産である。木曾、紀伊、長門、奥羽地方からも良材がでる。淡褐色で質堅く強く、又水に 耐ゆるところの上等材である。老木は周り一丈五尺、長さ十丈以上にもなり、木理(きぢ)が環状 (わなり)をなすものもある。之をボタンモク或いはタマモクと称して大いに珍重する。
用途は造船、建築、指物、挽物、其の他、諸器具、諸器械に用いられ一々数えることが出来ない。 殊(こと)に神社仏閣等永く後世に残すべきものは概(おおむ)ね此材(このざい)を用いる。
欅は枝を切り落とすと、切り口から雨露が浸入して材身を朽敗させるおそれがある。 潤葉の落葉樹。
けやき/ケヤキ
屋台の本体や彫刻材に用いられる欅は、伐採してから五十年生きているといわれ、生きているうちに材として使用すると、特に素性のよい材料を除いて、必ずといっていいほど取り付け後に暴れだして変形する。彫刻材としては平物を彫るにはあらが見えないので適当であるが、丸物はぼろぼろして欠ける欠点があり、緻密な部分を彫るには不適当である。さらに木肌にも大きな導管があるため緻密とは言い難く、漆下地や色付けにも好ましいものではないが、木目がすこぶる顕著にあらわれる材質感は西洋風の彫刻や洋家具を作るには相応しい。ケヤキのような木肌が使われるようになったのは建築では桃山(少なくとも鎌倉時代以後、多くは江戸時代以後)、彫刻では明治以降と考えてよいらしい。ケヤキの雄渾な木目は、桃山・江戸期の建築様式に合致している。もちろん例外はあり唐招堤寺にはケヤキ系の像が多いという、平等院の組子の斗にも用いられているらしい。 新材のときのケヤキの強度はヒノキのおよそ2倍。しかし劣化の速度(セルロースの崩壊速度)がヒノキの5倍ほど早いため、数百年を経ないでヒノキよりも弱くなってしまうという。木材の老化とは、極めて緩慢な熱的変化の集積と解釈されるそうで、水分がないときの常温で1000年かかった老化は、70度なら200日、100度なら10日間の変化に相当するとみなせるという。また、水分があればその老化はもっと早くなるという。木材は乾燥収縮により変形しますので、欅や檜の材料が部材として加工できるようになるまでには次のような工程があります。 @材料を丸太で仕入れ、盤に割って自然乾燥させます。 A墨を打って目的とする部材よりふたまわり程おおきく木取って自然乾燥させます。 B墨を打ってひとまわり程おおきく木取って自然乾燥させます。(右側の画像は乾燥中) C墨を打って部材の寸法に加工します。 左側の画像は製品(丁物)を仕入れた欅材で、製作の工期が短い場合には使用しています。自然乾燥は乾燥するまでの時間を要しますが、人工乾燥材に比べて木材内部の干割れは少ないようです。
けむかえし/煙返
「けむりかえし」ともいう。土蔵入口戸の内方にある石をいう。けむだし/煙出
「けむぬき」。けむぬき/煙抜
煙出ともいう。煙を排出するための穴又は道をいう。田舎屋又は古の家に於いては屋棟の両端に格子を作りてこれより煙を出す。又は屋根の中腹に穴をあけその上に小屋根を作りこれを煙抜きとする。けむぬきどかん/煙抜土管
土管にて作りたる煙道をいう。けむりのまゆ/煙の眉
美しき眉をいう。げや/下屋
母屋より差出たる小屋をいう。けやきまるたのねんりん/ケヤキ丸太の年輪
年輪は樹木の樹皮の内側にある形成層の成長が季節によって活発になったり鈍くなったりすることにより、形成層の細胞壁の幅が同心円状に厚く(春材=色は薄い)なったり薄く (秋材=色は濃い)なったりする現象です。 一般的には一年にひとつが形成され、年輪は緻密で均一なほど狂いや割れが少なく、強度や耐久性に優れると言われます。上の写真は彫刻材にも適した材料です。人為的に付けられた傷は、突き板ベニヤの製造業者が吟味するときにつけた「はつり跡」です。
けらくび/螻首
くびれたる形をいう。図は簓子を土台へ螻首として仕合わせたるを示す。其の他垂木を木負いへ螻首となすこともあり。けらば/螻羽
切妻屋根などの端をいう。桁端なりといえる説あり。けらばがわら/螻羽瓦
切妻屋根などの端に用いる得別の瓦をいう。その軒先にあるものを重箱瓦、螻羽唐草瓦又は袖瓦という。けられる/蹴られる
妨げられることをいう。けん/間
柱間をいう。「五間」とは建物の正面に柱間の数が五つのものをいう。すなわち柱数は六本になる。六尺又は六尺五寸をいう。普通の家においては六尺、御殿向にては六尺五寸を一間として建築する前者は田舎まにして後者は京まなり。
けんいし/剣石
「くさびいし」に同じ。げんかん/玄関
もと僧家の入口を玄関と呼び普通の家には玄関はなかりき、書院造り始まって以来その入口をも玄関というに至る。げんかんよこづけ/玄関横付
おおっぴらなこと。げんかんによこづけ/玄関に横付
乗物を玄関に横付けにすること。大柄なる体にいう。げんかんでちゃづけをくう/玄関で茶漬けを食う
極めて急忙なる喩え。げんきっこう/剣亀甲
「剣先」に同じけんざお/間竿/尺杖(しゃくづえ)
屋台の幅や高さなど各部の寸法が原寸で記された1寸角ほどの棒のこと。それぞれの屋台固有の長さの基準となるもので、屋台を製作させていただく毎に作成しています。けんさき/剣先
図の如き模様をいう。「剣亀甲」ともいう。げんざんみ よりまさ/源三位頼政
左は小池佐太郎の毛筆画習作。 手本にしたと思われる絵は 国立国会図書館デジタルコレクション『萬物雛形画譜』 の 2 に収載されています。げんじべい/源氏塀
数奇屋などに用いる塀なり。柱には焼杉などを用い腰長押と地長押の間は太鼓張羽目板にして竹の目板などを用い腰長押と笠木の間には襷を設ける。げんしょう/眼象
露盤、唐戸、器具などに付くことがある孔窮にしてその輪郭は三四以上の曲線よりなる。げんぞう
木材同士を直角に接合する際、仕口などをほどこさず切断したまま、 釘やビスなどで取り付けること。けんち/間地
間地石の略称なり。石垣用の石にして後方に至るに従い窄まる形のもの。間地は相州竪石又は豆州の田賀及び雲見より産する凝灰石の出来合石なり。けんちくそうしょく/建築装飾
(彫刻)動物や霊獣が建築装飾として、霊廟建築に使われるようになったのは桃山時代から江戸時代前半にかけて。日光東照宮(徳川家康をまつる)。豊国神社(豊臣秀吉をまつる)など。けんとう/献灯
神仏に灯を捧げること。その灯器が灯篭。けんとうくび/見当杭
遣形杭に同じ。けんとづか/間斗束
斗組の間にある束。けんともえ/剣巴
剣と巴とを交えて作りたる模様。図はこれに玉飾を添えたるもの。けんにんじ/建仁寺
建仁寺垣の略称。けんにんじがき/建仁寺垣
垣の一種。京都四條建仁寺に始めて用いたる故名づく。割竹を立て胴縁へ縄結いし更に押縁竹を取付けて作る。竹の外皮の方は押縁に接し控柱及び胴縁は反対の側にあり。げんのうばらい/玄翁拂
玄翁にて荒石の大瘤を拂い落とすこと。げんのうわり/玄翁割
玄翁にて石を打割ること。げんばいし/玄蕃石
溝の蓋などに用いる薄い平らなる石。相州竪石の出来合石なり。その大きさにより特別の名あり。けんまゆ/剣眉
虹梁下に附くことのある彫刻にして剣の如し。けんまく/懸幕
猩々緋羅紗地で作られている屋台のいわゆる天幕のこと。情報源は小池佐太郎です。単に懸垂幕の呼称を省略したのかは不明。なお、刺繍の縫い方には日向縫いと日影縫い(陰縫い)があり、日影縫いは輪郭だけを縫うので縁起がよくないとのこと。